直接利用するかしないかは別にして,私たちの日常生活は通信ネットワークの恩恵を幅広く受けています。銀行でお金を下ろすにしても,ICカード式の乗車券で電車に乗るにしても,インフラとしてのネットワークが利便性を支えてくれているのです。

 昨年の秋,新聞だったかWebだったかで,九州方面の島への電話回線が切れたといった理由により,気象情報を扱うアメダス(AMeDAS:Automated Meteorological Data Acquisition System)のデータが収集できないというニュースを目にしました。台風シーズンに情報が取れなくて困っているというような記事だったと記憶しています。

 私はそれまで意識したことがなかったのですが,当然のことながらアメダスもネットワークを介してデータを収集していたわけです。その記事を見たことによって,「気象情報もネットワークが支えているんだ」ということを,自分の意識に取り込むことになりました。

 とはいえ,アメダスがどんな回線を使って,どのぐらいのデータを送っているのかまでは,知るよしもありませんでした。記事に書いてあったかもしれませんし,調べれば分かることでしょうが,そこまで突っ込むことはしませんでした。

 昨年の暮れからITproで連載を始めた「ネットワーク調査隊 インフラ編」では,まず1回目としてアメダスの仕組みの謎解きをしました。世はブロードバンド時代ですが,アメダスでは16kビット/秒のISDN回線を使っているというのです。社会インフラとしてのネットワークには,今でもこうした使われ方があることを改めて感じた次第です。

 連載の2回目は,1月12日に公開したばかりのNHKホールの携帯電話抑止装置の記事です。コンサートホールなどで,演奏中に図らずも鳴り出した携帯電話の呼び出し音に気分を害したことのある方も多いでしょう。私個人は演奏者として舞台に立つこともあり,静かな場面で鳴り出す呼び出し音にやりきれなさを覚えたこともありました。最近は勝手に携帯電話の電波が「圏外」になってくれるホールが多く,こうした場面に遭遇することが減りました。では,実際に圏外にする仕組みはどうなっているのか。問題点はないのか。気になる方は上記のリンクをクリックしてください。

 これらは,多くの人の実務にそのまま関係する話題ではありません。飲み屋でのうんちく話のネタにはなるかな?といったものでしょう。でも,そのネタをちょっと知っていることでネットワークへの親しみが増すようであれば,実務情報やニュースとは違った側面でのITproの役割を一つ,果たせそうな気がしています。