オープン系システムで99.999%以上の可用性の確保を目指す――。東京証券取引所は、システム増強にかかる時間とコストを重視し、次世代売買システムをオープン系で開発することを決めた。さらに、証券取引所としては世界最高レベルの性能を出すために、すべてのアプリケーション・取引データをメモリー上に読み込んで処理する。この条件でメインフレーム並みの可用性を実現するために、富士通はインメモリー・データベースの3重化ノードという全く新しい構成を提案した。

待機系ノードまで2重化

 富士通の提案は、同社の基幹IAサーバー「PRIMEQUEST」を、本番系と2重の待機系を加えた3重化ノードで利用するもの。高速性を実現するために、売買注文を付き合わせる「板」と業務アプリケーションをすべてメモリーに展開する(【真相3】「東証システム、10ミリ秒への挑戦」を参照)。この際、本番系ノードのメモリー上で更新処理が発生する都度、待機系ノードのメモリー上に差分データを送る「同期処理」を実行する。本番系ノードがダウンしても取引データが消失しないようにするためだ。待機系は万全を期して2系統用意。本番系から待機系への切り替えは7秒以内で実行する。

 それでも「アルゴリズム取引のプログラムの不具合で、異常な注文が短時間に殺到するといった事態も考えられる」(東証)。そこで東証は、次世代売買システムにおいて、注文を受け付ける「参加者ゲートウエイ」などに、初めて、過度の注文を受け付けないようにする「流量制限」の機能を設ける予定だ。

 併せて東証は、次世代システムでの運用を目標に、バックアップ・サイトを新たに構築する。そのバックアップ用システムでも、3重化ノード構成を採用する計画だ。

処理方式と業務ルールを簡素化

 一方で、十分な信頼性を確保するためには、システムの機能を強化するだけでなく、これを支える体制の整備が欠かせないというのが東証の考えだ。そのために大きく二つの手を打っている。

 一つは、現行のシステム処理方式や業務ルールを見直し、簡素化すること。要件の複雑さを取り除けば、処理の高速化はもちろん、不具合の要因を減らせる。そのために東証は証券会社などに協力を要請。例えば、注文電文への返信を現行システムの2種類から1種類にしたり、同時に注文を変更できる項目を数量と値段、執行条件に限るといった方針を示している。

 もう一つは、東証社内の体制を強化することだ。同社品質管理部を中心に、システムの開発標準や運用標準の見直しを実施。運用標準については、IT運用のベスト・プラクティスであるITILに基づいた標準をとりまとめている。これらを次世代システムにおける開発・運用のガイドラインとすることで、信頼性を担保する。