筆者は過去何年にも渡って,「Windows Mobile」の記事を書き続けている。米MicrosoftがPDA分野に初めて参入したころは,1990年代後半に市場を支配していたPalm OSベースのデバイスに押されていた。その後,スマートフォンの登場によって状況は一変し,Windows Mobileの利点が広く知られるようになった。実は筆者は長い間,スマートフォンに手を出さなかったのだが,今はそれを反省している。

 筆者はガジェットが大好きで,新しいテクノロジは徹底的にテストしないと気がすまない性質なのだが,偶然がいくつか重なって,筆者はWindows Mobileデバイスを今まで避けていた。その理由は2つある。まず第一に,筆者は様々なPDAをテストしてみて,常に最新のデバイスを使い続けることが便利なことではなく苦痛だという結論に達していた。そのためここ数年は,世界で一番安いPDA,すなわち紙のプリント・アウトを使って旅行の計画を立てていた。

 第二に,筆者は年寄りになってきている。最近のPDAやスマートフォンで使われている,非常に小さいBlackberryタイプのキーボードは,どう考えても筆者には使えそうにないと感じていたのだ。筆者が,テキスト・メッセージングのヘビー・ユーザーになることは,今後も絶対にないだろう。実を言うと,ここ何年かの間で筆者が送信した唯一のテキスト・メッセージは,受信したテキスト・メッセージの質問に対する答えとして返信した,「K」(訳注:OKのこと)という一文字だけなのだ。

実用的になったスマートフォン

 だが実用性という観点から見て,スマートフォンの便利さは1つ上の段階に進んだということが,ますます明らかになっている。読者の多くの方と同様に,筆者も既に携帯電話を使用しており,どこに行くにも持参している。とりわけ出張に出るときは,必ず持参する。さらに旅行のときはMP3プレーヤを必ず持っていくし,時にはデジタル・カメラを持参することもある。もちろん仕事用の電子メールにアクセスしたり,スケジュールやするべき仕事のリストを管理したりするときは,Microsoft Outlookを使用する。

 誰もが知っているように,現在のWindows Mobileベースのスマートフォンは,携帯電話機能やモバイル版のWindows Media Player (WMP) 10を使った基本的なMP3再生機能,基本的なデジタル・カメラ機能(カメラの性能は低いが),よくできたWindows Mobile用のOutlook(電子メールやToDoリスト,連絡先,仕事などの機能が搭載されている)が搭載されている。Outlookの機能だけでも,多くの人にデバイスを買いたいと思わせられるだろうと筆者は思う。

Exchange Server 2007を使うならスマートフォンが便利

 だが筆者にスマートフォンを手に入れようと思わせたのは,上記の機能ではなく,別の2つの新しいテクノロジだった。1つ目は,「Outlook Voice Access (OVA)」という新機能を備えた「Exchange Server 2007」の存在である。電話を使ってExchangeデータにアクセスするときに,OVAは本当に便利である。

 OVA自体は,スマートフォンを必要としない。どのような携帯電話とでもいっしょに使用できる。ところがOVAは,Exchange 2007が持つ多くの刺激的な新機能の1つにしかすぎないのだ。OVA以外の新機能の多くは,ユーザーが外出先でキーボード・ベースのスマートフォンを使って電子メールの選別を行える場合に,より大きな効果を発揮する。そこで筆者は,Exchange Server 2007を使うなら,ただの携帯電話よりもスマートフォンが便利だろうと考えた。

 2つ目のテクノロジは,米Verizonのような通信事業者が提供する,スマートフォンとPCの両方で利用できる高速インターネット・サービス「Evolution-Data Optimized (EV-DO)」である。厳密に言うとこれは,新しいテクノロジではない。だが値段が下がったおかげでようやく入手できた筆者にとっては,このテクノロジは新しいものなのだ。

 筆者がこのサービスのテストを始めたのはつい最近のことだが,これまでのところ印象はいい。EV-DOは,ケーブル・モデムやT1回線,あるいはWi-Fiアクセスなどに取って代わることはできないが,可能な限りオンライン状態にいる必要のある筆者のような人間にとって,これは何もないよりはよっぽどましで,非常に便利なものなのだ。

 面白いことに,スマートフォンの分野におけるこうした活発な動きを誘発したのは,Microsoftだった。同社は,Exchange 2007といっしょにテストするようにと,筆者にMotorola Qを送ってきた。自分のExchange Serverといっしょに使うために,Motorola Qのセットアップと設定を開始して数分が経過したとき,筆者はこれは非常に上手くいくと悟った。そこで筆者はVerizonに駆け込んで,自分用のデバイスを購入した。Microsoftから借りていたテスト用ユニットは,数カ月後に返すことになっていたからである。さらに,Verizonの現在の取り決めだと,リベートを利用してただ同然でデバイスを手に入れられる。

 Windows Mobileは完璧ではないし,もちろんMotorola Qも完璧ではない。だが正常に機能するオールインワンのデバイスという夢は,以前よりもはるかに実現に近づいている。そして今は威勢よくこの流れに飛び乗るときなのかもしれない。このデバイスを使った感想については,数週間後に皆様に報告しようと思う。