無償データベース市場の競争は常に激しい。「SQL Server 2005 Express Edition」で市場をリードしている米Microsoftに続き,米Oracleと米IBMが,企業用データベース・ソフトをベースにした無償製品をリリースしたのだ。Oracleの無償版データベースは「Oracle 10g Express Edition(Oracle Database XE)」であり,米IBMの製品は「DB2 Express-C」である。

 無償版データベース市場にソフトウエア業界の巨人たちが参入したことだけが特筆すべき点ではない。エントリ・レベル・データベースの由緒正しいオープン・ソースである「MySQL」データベースも,SQL Server 2005 Express Editionの手ごわい競合の1つだ。MySQLには,「MySQL Community Server」と「MySQL Enterprise」という2つの製品の選択肢がある。MySQL Community Serverは無償のオープン・ソース製品で,MySQL Enterpriseは「販売用」製品だ。一見した限りでは,それぞれの製品は多くの共通の機能を持っているため区別しがたい。どちらを選択するかは,機能の違い,対象プラットフォーム,アプリケーションの開発に使うツールによる。

 今挙げたようなエントリ・レベルのデータベースは基本的にすべて無償で,どれも同じようなリレーショナル・データベース・サービスを提供しているし, 拡張性の程度も同じだ。最初に気づく点は,サポート対象のOS,メモリー,記憶域容量の違いだろう。SQL Server 2005 Express Editionは,Windows OS,1個のCPU,1Gバイトのメモリー,4Gバイトの複数データベース環境でのみ動作する。Oracle Database XEはWindowsとLinux OSで動作し,1個のCPU,1GバイトのRAM,合計4Gバイトのユーザー・データ(4Gバイトの複数データベースではない)をサポートしている。

 DB2 Express-CもWindowsとLinuxのOSで動作するのは同じだが,拡張性が少しだけ高く,CPUが2個あるシステムで動作し,4Gバイトのメモリーをサポートし,記憶域容量に制限はない。MySQL Community ServerはWindowsとLinux OSで動作し,RAMと記憶域容量に制限はない。

 これらの製品にはそれぞれの利点がある。SQL Server 2005 Express Editionは高いパフォーマンスを発揮し,CLRとXMLとの融和性が高い。.NETテクノロジを使って,デスクトップ市場のほとんどを占めるWindowsプラットフォーム向け製品を開発している場合,SQL Server 2005 Express Editionは非常に有効な選択だ。SQL Server 2005 Express Editionは,開発ツールである「Visual Studio 2005」との融和性が群を抜いて高い。

 「SQL Server 2005 Express Edition with Advanced Services」には,管理ツールである「SQL Server Management Studio Express(SSMSE)」が含まれていて,他の無償版データベース製品にはないコンポーネントである「Reporting Services」がサポートされている。

 他製品に目を向けると,OracleにはWebアプリケーション開発ツール一式が付属している。DB2 Express-Cは,市場に出回る他の無償版データベースよりも拡張性が高く,ビルドインのGUIがあり,XMLとの融和性が高い。MySQL Community Serverは省スペースでパフォーマンスの高いデータベースだ。

 本音を言えば,これらすべての製品の利用価値は高いが,どれを選ぶかはいくつかの要因に左右される。もちろん,Linuxでのサポートが必要であれば,SQL Server Expressは選択肢から外れる。MySQLはオープン・ソース製品なので,通常,Linuxアプリケーション用のデータベースとして選択される。しかし,開発中の製品と対象ユーザーがWindows環境の場合,SQL Server Expressには強力なレポート機能があり,Visual Studio開発環境との融和性は圧倒的に高いと言えるだろう。