リサーチ グループ バイス プレジデント
山野井 聡
ガートナーは毎年,世界のCIOに対して様々な調査を実施しています。質問項目の一つ,「CIOから見た,IT貢献を阻害する要因」の集計結果をご紹介しましょう。
トップ3を挙げていきます。「利用部門がIT部門と連携不足」が25%,「利用部門が自らのニーズを理解していない」が24%,「利用部門の誤った指示」が21%でした。要するに,CIOが挙げる主な理由は,はっきり言って「利用部門が悪い」ということです(図3)。
図3●IT部門と利用部門の隔絶が大きな課題 [画像のクリックで拡大表示] |
逆に,経営者や利用部門に聞くと,おそらく同じ比率で「IT部門が悪い」ということになるのではないでしょうか。ちなみに「IT部門が利用部門と連携不足」と挙げたCIOは12%でした。
少なくとも言えるのは,IT部門と利用部門の間には,いまだに非常に大きな隔絶がある,ということです。
「助走」としての対話が必要
いま,企業経営における重大なキーワードの一つは,アジリティ(俊敏性)です。ビジネスの変化,競合他社の変化。そのスピードにキャッチアップできる情報システム,そしてそれを支えるIT部門が,経営者や利用部門から強く求められています。
ただ,いきなり「速く走れ」と言われても困る,というのがCIOやIT部門の正直な気持ちでしょう。トップスピードになるには,「助走」をしなければなりません。CIOやIT部門にとっての「助走」は,利用部門のニーズを先読みし,これに備えることです。そのためにはまず,「助走としての対話」を増やしていただきたいと思います。
ご自分のスケジュール表を見て,確認してください。自分の“顧客”,つまり経営層や利用部門,場合によっては社外の最終顧客かもしれませんが,こういった顧客との対話時間はどれだけありますか。
またCIOやIT部門長の方には,ご自分が擁するITスタッフに,利用部門の目線で話ができるメンバーがどれだけいるか見ていただきたいと思います。例えば,IT分野に閉じた専門用語を一切使わず,利用部門と2時間,経営の課題について議論できるだろうか,と。
顧客との対話を増やす。2007年に良い成果を生むには,最初にこれに取り組まれると良いと思います。