アーキテクチャー

 専門用語や外国語を文章や話し言葉の中で使うことにかなり抵抗、いや不快感を感じるのだが、一般的に使用されだしたのでやむなく使う事にする。

 アーキテクチャー(Architecture)というと通常は建築物、建造物を一義的に意味する場合が多い。多分最初にIT分野で使い始めた人は建造物のイメージが脳のなかにあったのだろう。似たような言葉でストラクチャー(Structure)やフレームワーク(Framework) があり、多分どれも同じような事をイメージしているが、こちらはどちらかというとその 『物』の構造や構成、組成を指すことが多い。

 ウェブサイトをイメージの中での構造物だと仮定すると、あるフレームワークでつくられたアーキテクチャーであるということができる。

ウェブサイトのアーキテクチャー

 一定の考え方や方針、コンセプトもなくアーキテクチャーをつくることはできない。これは、サイトに限らず何においても同様だろう。通常、サイトのコンセプトや方針つまりVOICEを出すのは、そのサイトのオーナーであろう。

 このVOICEを受け、形にしていくのがプロデューサーであり現場監督であるディレクターの仕事になる。サイトの根幹をなすサイト構造 さらには構成されるコンテンツをどう配置し、どのように発信するかまでの情報構造(Information Architecture)のデザインをどう考えるかが、その後のサイトを大きく左右する要となる。

 ウェブデザインというと、一見、従来の宣伝広告等の流れでグラフィックデザインの範疇で捉えられがちだが、それは大きな間違いである。グラフィックデザインはウェブデザインの中ではほんの一部の表層的な領域にすぎず、その逆のアプローチ(つまりグラフィックデザイナーがウェブ構築を担当する)は考えられないし、必ず失敗する。

 もちろん、優秀なグラフィックデザインは必要であるがそれはウェブのアーキテクチャーから見ると一握りの部分であるという共通認識が必要だと思う。情報内容に関するロジカルな考え方、冷静な判断と分類能力‥‥。これはどちらかというと情報整理学に近いかもしれない。膨大な文献を秩序正しく分類整理する、図書司書の方々が学んだような手法や考え方などは多いに参考になるだろう。

 ウェブサイトの場合は2次元的な印刷物と違って、時間と空間をコントロール(管理)できる感性も必要である。更にITの上で成立しているためITの基本的な理解もあれば更に世界がひろがるだろう。

 これはまさしく3次元的プライベートメディアなのである。この特性をよく理解した上でのインフォメーションアーキテクチャーのデザインが求められる。

 その具体的な手法や技術そのものは、デザイン(設計)のくくりのなかで専門家の方々の意見を参照していただくのがいいだろう。情報構造がきちっと設計されたウェブサイトは顧客側からもすぐ感じ取られるものである。自分、自社のサイトはこの情報構造の設計がどのようになされているのか確認されるいい機会になれば幸いだ。

情報の作成、提示、表示手法

 情報をあらかじめ作成しておき、一定の考え方でアーカイブし、顧客からのリクエストでそれを提示、表示していくという静的な方法が従来の一般的な手法であった。ここ数年、リクエストに応じてデータベースから必要な情報を組み合わせて動的にページを作成し表示するというサイトを多く見かけるようになってきた。

 この場合、順列組み合わせで種々の見せ方ができるため顧客への多様なアプローチが可能となる。しかし、その反面、静的なページがサイト内にないため、各種検索エンジンにひっかかりにくいというデメリットも発生する。これに対する対策( SEO)も各種考えられており、ちゃんと対処すればこの課題も解決しているようである。

 つまり、新しい手法や技術の導入や採用も大いに結構だが、そのことから派生する各種デメリットもきちんと分析し、対応できるものは速やかに対応していくという姿勢が必要だろう。

 あるショッピングサイトで、多額の設備投資で最新の表示技術やサイト構造に変更し、意気揚々とリニューアルオープンしたが、リニューアル前に比べて数万ドル/月 売り上げが落ちたという事があった。

 これは、ページ生成手法を動的にしたことでサーチエンジンにひっかからなくなったのが大きな原因であった。その後SEOをおこない、無事に業績回復したようだが、このような話があちこちにゴロゴロころがっているのも、このあたりのもろさ、歴史のなさ(人材不足?)を物語っているのかもしれない。