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日経ソフトウエア
編集長

真島 馨

 もしもし?

 あけましておめでとうございます。日経ソフトウエア編集部の真島です。はい――いえいえ,こちらこそ。ぜひ今年も,面白い原稿を期待してますよ。

 実は今日,電話したのはですね,年末に,ご相談した件についてのお返事をお聞きしたいと思いまして――ええ,そうです。今年2007年のソフトウエア開発シーンはどうなるかという予想です。あ,その前に2006年の総括なんですが…。

 やっぱりWeb 2.0ですか――いやあ,私も同感です。Googleしかり,YouTubeしかり,mixiしかり,本当に2006年はWeb 2.0に象徴された年でしたよね。我々出版社も,もっと加速をつけてWebに取り組まないとまずいなあって実感しました。

 ええ,最近は弊誌もWebに力を入れてますよ。ソフト開発者向けにITpro Development,Web担当者向けにStrategic Web Designと,昨年二つのサイトを立ち上げたんです――もちろん,Web 2.0なんておこがましくてまだWeb 1.xくらいですが,今年はもっと充実しますんでぜひウォッチしてください――は? 宣伝なんて聞きたくない。失礼しました。

2007年のキーワードは「再生」

 で,今年の展望なんですが――予想が外れたら恥ずかしい? まあ,そんなことおっしゃらずにキーワードだけでも挙げてみてくださいよ――でも,昨年が「Web 2.0」だから今年は「Web 3.0」なんてのはやめてくださいね…。

 え,なんですか?――ソフトウエアの再生(ルネサンス)?

 既存のソフトウエア技術や考え方が見直されたり再編・統合されたりして,新しく「再生」してくるという意味ですか。この流れは昨年からずっと続いていて,2007年も要注目だと――。単なるバージョンアップとは少し意味が違うということですね――興味深いなあ。例えばどんなことでしょう?

 まずは――エルエル…,Ruby,Perl,PHP,Pythonといった「Lightweight Language(軽量言語)」のことですね。確かにLLはここ数年,ソフトウエア開発において台風の目になっていますよ。LLを使ったWebアプリケーションの開発が増えてますし,Web APIを組み合わせるマッシュアップだってLLで実装することが多いですから。

 フレームワーク?――ええ,Rubyなら「Ruby on Rails」,Perlなら「Catalyst」といったWebフレームワークが人気ですが――ははあ,こういったフレームワークやLLを使った新しい技術が普及してくることで,LLに対するイメージやLLの位置づけが変わってくるというわけですか。確かにJavaScriptだって,Ajax人気でプログラミング言語として再評価されたし,RubyもRuby on Railsというキラーアプリが脚光を浴びたおかげで注目度が格段にアップしましたからね。LLにまつわる一連の動きは,確かに「再生」と呼べるかもしれません。

 え?――「Heavyweight Language(重量言語)」も忘れちゃいけない? 重量言語の代表といえばJavaですが――なるほど,確かにJavaはGPLでオープンソース化なんていうエポックがありましたね。最新バージョンのJava SE 6では,LLの影響でスクリプティングの機能もサポートされましたし…言われてみるとこれも「再生」だなあ。ああ,そういえばDelphi言語も,Turboの名称が復活してTurbo Delphiとして生まれ変わりましたね。なるほど,こうして考えると,プログラミング言語全体が「再生」しているわけだ。

 あ,それならユーザー・インタフェース(UI)技術なんてどうでしょう?――ええ,Windows Vista,つまり.NET Framework 3.0が搭載する新しいUI技術のWPFです。これからはWPFに加えて,Webブラウザ上でもリッチなUIを構築できるWPF/E(開発コード名)が登場してくる予定じゃないですか。それに米Adobe Systemsも,Flash,PDF,HTMLなどを統合した技術「Apollo(開発コード名)」を開発中です。こういったことを全部ひっくるめれば,UIも「再生」していると言えそうですよね。

 え?――Vistaは登場したばかりだし,UIの「再生」にはまだまだ時間がかかるだろうって?――なるほど,確かにそれもそうだなあ。でも,何がきっかけでブレークするかわかりませんから…。じゃあ,言語や技術じゃなくて,もっとマクロな意味での「再生」というのはありますかね?

 2007年問題――ああ,業務やITがわかる人材が不足するという問題ですね。ははあ,ベテランの技術者が大量退職するということは,残った世代だけでソフトウエア開発のレベルを維持していかなくてはならない。そこで,ソフトウエア開発の体制や方法論といった様々な領域で,抜本的な見直しが加速するというわけですか。

 確かに,弊社でも「ソフトウエア品質」とか「設計」とか,そういう基本的な技術分野のセミナーが,最近は大人気なんですよ。現場の技術者やマネージャは,かなり危機感を持っているみたいです。そういう意味で,2007年問題がソフトウエア開発のあり方全体を「再生」するきっかけになるという予想はうなずけます。

 それにしても,こうして2007年を「再生」という視点から見ると,ほかにもいろいろ発見がありそうですね。そういえば,米Appleが先日発表した携帯電話機の「iPhone」。ソフトとハードの違いはありますが,あれも電話における「再生」と言えませんか? ソフトウエアを徹底的に活用してハードウエアのあり方を変えてしまう,これも「再生」なのかもしれませんよ。まあ,ちょっとこじつけっぽい気もしますが…。でも,なかなか面白いです。ありがとうございます。キーワードは「再生」,さっそく「編集長の眼」で使わせていただきます。

 ところで「再生」という言葉で思い出したんですが,原稿の「再生」のほうはどうですか? 先月,書き直しをお願いした件,昨日が締め切りでしたが――そっちのほうは――あれ? もしもし,もしもし,もしも~し…。