「経営とIT」サイト
編集長
谷島 宣之

編集長 明けましておめでとう。早速,「経営とIT」の編集会議をしたいのだが,年明けだし,新年会を兼ねて一杯やろうということで,こういう場所に集まってもらった。ところで今年,何をする年か,計画を立てた?

N記者(ITpro編集部) 1月,米国に出張します。それから去年から始めた『EnterpriseOffice』という特別番組を強化します。記事については,もっともっとエッジが効いたものを書きます。

編集長 最後は計画ではなくて願望じゃないの。

N記者 いえ,ちゃんとやりますよ。むしろエッジが効いた記事を編集長が載っけてくれるかどうかが問題でしょう。

編集長 本当に尖っていればね。ただ今のままでは難しいぞ。海外出張とEnterpriseOfficeは大丈夫だろう,締切があるから。しかし「エッジが効いた記事を書く」については締切がない。

B記者(日経コンピュータ編集部) 言っていることがよく分かりませんが。

編集長 例えば,引っ越しとか結婚とか旅行とかMBAをとるとか,そういう計画はたぶんやれる。締切があるし,約束した期限までにやるべきことをしないと関係者に迷惑がかかるから。ところが,体重を減らすとか,煙草を止めるとか,こういったことはなかなかできない。できなくても誰にも迷惑がかからないから。体重を減らせたら結婚に役立つとしても,結局は結婚するだけで精一杯となって,体重は減らせなかったりする。

N記者 ダイエットしてますよ,僕。

編集長 例えばの話だってば。種明かしをすると,今の話は,米国の大手ITリサーチ会社のガートナーが出している『CIO New Year’s Resolutions,2007』という報告書からほぼそのまま引用したんだ。ガートナーは,CIO(最高経営責任者)が2007年にやるとよいことを10点挙げている。10点は全部,禁煙とかダイエットのようなもので,実施すれば進行中のビッグプロジェクトに大いに寄与するものの,実はなかなかできない,というわけ。

ジェネレーションXに任せよ

I記者(日経ビジネス編集部) 10点ってどんな内容ですか。

編集長 1個目は,Create an IT Generation Succession Planだ。要するに,ITの西暦2007年問題対策だね。1946年から始まったベビーブームで生まれた世代が一気に引退し,「IT部門は知恵とリーダーシップを失う」とガートナーは言っている。

I記者 2007年問題って,編集長のでっち上げじゃなかったのですか。

編集長 人聞きの悪いことを言わないように。

M記者(日経コンピュータ編集部) 昔,ITproに2007年問題をテーマにコラムを書かれた時,若い読者から「団塊の世代はノウハウなんぞ持っていない,早く消えてしまえ」といった批判的な書き込みがありましたね。

編集長 ガートナーのこの報告書はえらく面白い。知恵とリーダーシップを失う反面,ベテランというだけで必要以上に昇進してしまった人とか,新しいことに取り組めない人材を一掃できるからいい機会だ,と書いてある。

M記者 で,どうすればいいと。

編集長 1960年代から70年代に生まれた,いわゆるジェネレーションX(エックス)から,一番できるのを選んで挑戦的なプロジェクトを任せろ,と言っているね。僕の記事に怒った若いITpro読者も,ガートナーのこの意見なら納得するだろうな。

D記者(日経ソリューションビジネス編集部) 言ったもの勝ちみたいな話に思えますが,面白いですね。ITだけではなくて,記者のGeneration Succession Planが必要でしょう。N君がさっき言っていた話に関係するけれど,現場を信用してもっと任せて欲しいです。

編集長 どの話?

D記者 エッジを効いた記事を上が載せないという話です。思い切りやれ,と言うわりには最後,ちまちまチェックするじゃないですか。

編集長 3年近く続けていた禁酒を昨年末から止めたせいか,もう酔っぱらってきたように思うが,それは聞き捨てならないね。誰々のせいで何々ができないっていうのは,自分が無能だと宣言することと同じ。上にごまをするなり,騙すなり,何でもいいからやりたいことをやって載せればいいじゃない。本来,禁酒とかダイエットは,人に言われてするのではなく,自分でやるものだ。

B記者 明らかにもう酔ってますなあ。

D記者 (小声で隣のB記者に)編集長って問題を起こすから禁酒していたのじゃなかった?。

締切を守るだけではダメ

編集長 大体,君たちは,でっどらいんどりぶんわーるどに毒されているぞ。

T記者(ITpro編集部) それ,何ですか?

編集長 deadline-driven world。締切優先の世界という意味だな。これも受け売りで,同じガートナーの報告書にある言葉だ。面白いんだ,書き出しが「CIOやITリーダーは,a governance-disciplined,portfolio-prioritized,budget-optimized and deadline-driven worldにいる」となっている。我々の仕事やプロジェクトは,統制とか,優先順位とか,予算とか,締切とかに縛られている。縛られているからなんとかやってのけるが,それだけで精一杯。こうした仕事をうまくやって価値を創造するには,締切に縛られないアクションもとれ,とガートナーは言っている。

 つまり,締切を守って原稿を書くだけじゃあ,もの足りない。エッジを効いた記事を書くとか,やりたいことをやるには,そのための作戦を自分で考えて本業と並行して実践しないと。

 柄にもなく演説したら疲れたな,とにかく今年も協力して下さい,お願いします。なにしろ経営とITプロジェクトは専任記者をおかず,全社の編集部が協力して進めるという,なかなか挑戦的な案件だから。あ,失礼,H君は今年から専任になったんだ。

H記者(ITpro所属) 去年も相当の時間を「赤」の仕事に費やしていましたからあまり変わらないかもしれませんが,専任として今年はもっと赤のサイトの特徴をはっきり出していきたいです。

I記者 あの,赤って何ですか。

H記者 『EnterprisePlatform』というサイトのことです。

編集長 I君にはちゃんと説明していなかったが,「経営とIT」のプロジェクトにはサイトが二つある。もう一つのサイトの正式名称は,『経営とIT新潮流』というのだけれど,関係者は「黒」と呼んでいる。経営とIT新潮流は,日経ビジネスオンラインとITproの共同プロジェクトなんだ。

赤と黒が必要な理由