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日経コミュニケーション
編集長
渡辺博則

 2007年の日本の情報通信を展望してみると,通信業界はもとより,企業のネットワーク・システムの在り方が大きく変わり始める年ということになりそうです。

NGNが開く新たな企業システムの境地

 2007年はNTT,KDDI,ソフトバンクという通信大手3グループが,IPベースの「NGN」(次世代ネットワーク)の構築を本格化。なかでもNTTグループは商用化段階に入ってきます。

 NGNは,通信事業者にとって既存の交換機ベースの電話網をIPベースの網に切り替えて提供コストを削減する狙いが大きいのですが,基本的にはインターネットより高品質で高機能,安心して使えるネットワーク・サービスの実現を目指すもの。既に,インターネット経由でCRM(顧客情報管理)など様々な業務アプリケーションを利用できる「SaaS」(Software as a Service)の流れが押し寄せています。こうしたSaaSとNGNの組み合わせにより,基幹業務にも適用可能なネットワーク経由のサービスが実現すると考えられます。

 こうなると企業システムの設計手法も大きく変わってきます。もちろん,企業向けでは固定電話のIP化も進展。2007年はネットワークを利用して音声通話だけでなく,業務システムの構築・運用までを含めたコスト削減や業務革新の動きが顕在化すると見込まれます。さらに固定通信と移動通信の連携(FMC)により,場所やネットワーク,端末を問わずにアプリケーションを利用できる環境も次第に整備されることになりそうです。

移動通信で新規参入,固定では家庭囲い込みへ

 通信業界の激動は,2007年も続きます。移動通信分野では,3月以降に新たにイー・モバイルなど2社が携帯電話市場に参入する見通し。モバイルWiMAXなどの無線ブロードバンド新方式に対する周波数割り当ても決定し,新たな競争フェーズに入ります。固定通信では,企業ネットワークのブロードバンド化はもはや当然のこと。FTTHなどのブロードバンド回線を使った,家庭の囲い込み合戦がより一層激化。通信3強を軸にした大競争が繰り広げられることになりそうです。

 家庭向け固定通信の分野では,既にインターネット接続や固定電話,デジタル放送などのサービスを一括して提供する「マルチプレイ」による顧客囲い込み合戦が進展中。NTT東西地域会社は「光トリプルプレイ」のキャンペーンをテレビCMなどを通じて大々的に展開し,FTTHサービス「Bフレッツ」の加入者を増やそうとしています。また,KDDIは東京電力のFTTH事業の統合を完了し,さらにケーブルテレビ(CATV)事業者との提携戦略を加速しています。狙いはNTTに依存しないCATV網によるブロードバンド・アクセス回線の確保。CATV事業者と連携した「NTT対抗軸」の形成が目的です。一方,ソフトバンク・グループもCATV事業者との連携強化など次の一手を着々と準備しています。

 こうして2007年は移動通信に加え,固定通信,さらに放送業界を巻き込んだ業界再編の動きが顕在化することが考えられます。通信政策も,より一層の競争環境の整備へと大きく踏み出そうとしています。この1年は,とても目が離せそうにありません。

 2007年はまさに日本の情報通信の変革期。「日経コミュニケーション」では,こうしたネットワークにかかわる情報をより早く,詳細にお伝えしていきたいと考えています。今後に,ぜひご期待ください。