第1回では、ITエンジニア1万人のスキルレベルを紹介した。第2回目の今回は、主にITエンジニアの年収について分析しよう。さらに、エンジニアの学歴や転職・起業に対する意識などについても紹介する。

 スキルレベルの差は、年収にどれだけ表れているのか。それを示したのが図1だ。参考値が含まれる品質保証を除くと、どの職種でも、スキルレベルが高くなるにつれて年収が上がる点で共通している。

図1●スキルレベル別、職種別に見た平均年収
図1●スキルレベル別、職種別に見た平均年収
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 エントリレベルとハイレベルの年収差は、平均で約300万円。エントリレベルの平均年齢は31.4歳、ミドルは37.1歳、ハイは41.6歳であり、この年齢差も年収差の大きな要因となっているとみられる。

エントリは40歳で年収が上限に

 スキルレベル別の平均年収や平均年齢を、職種や業種ごとに示したのが表1である。回答数が全体の1%に達しないものは、参考値扱いとした(*の付いた数値)。エントリレベルとミドルレベルでは、スキルレベルごとに年収を比較し、最も高いものを赤色、最も低いものを青色で示した。

表1●スキルレベル別の平均年収と平均年齢
表1●スキルレベル別の平均年収と平均年齢
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 同一のスキルレベルで職種ごとの平均年収を比較すると、「マーケティング」と「コンサルタント」が高く、「ソフトウエアデベロップメント」が低かった。レベル2では、コンサルタントの平均年収(年齢)が634万円(35.7歳)であるのに対し、ソフトウエアデベロップメントは449万円(31.6歳)。レベル4では、マーケティングが922万円(45.3歳)、ソフトウエアデベロップメントが568万円(34.9歳)だった。この差には、職種だけでなく平均年齢の違いが影響していると考えられる。

 業種別に見ると、どのスキルレベルでも平均年収が高かったのは、ユーザー企業だ。中でも製造業は、レベル1、2、4で最も平均年収が高かった。これに対し、どのレベルでも低かったのは、ソフトウエアベンダーである。

 職種別と同様、年齢要素は無視できないが、レベル2では製造業が547万円(35.2歳)であるのに対し、ユーザー系ソフトウエアベンダーは433万円(31.6歳)。レベル4では製造業が784万円(42.0歳)に対し、独立系ソフトウエアベンダーが629万円(37.8歳)と、いずれも100万円以上の開きがあった。

 このように職種や業種によって年収差はあるものの、経験が浅い25歳以下では、レベル差による年収差はほとんどない。だが、年齢を重ねるにつれて、年収差はどんどん顕著になる(図2)。

図2●スキルレベル別の年収推移
図2●スキルレベル別の年収推移

 この図から、まず年収差が一気に広がる30代前半までに、エントリのエンジニアはミドルを、ミドルのエンジニアはハイを目指すことが年収増につながるといえる。この時点で、エントリとミドルの年収では約80万円、エントリとハイでは約180万円の差が付く。

 次の目安は40代前半だ。エントリのままでは、この時点で年収の伸びが鈍化する。それまでにミドルにレベルアップすれば、50代前半まで年収増を期待できる。

700万円超で変わる就業意識

 ITエンジニアの年収は、スキルレベルほどではないにしても、IT業界への就業意識と関係している。特に年収が700万円を超えると、その傾向が顕著になる。IT業界に入って「良かった/どちらかというと良かった」と回答する割合が、一気に10ポイント近く増えるのである(図3)。

図3●年収別に見たIT業界に対する満足度
図3●年収別に見たIT業界に対する満足度

 こうしたIT業界に対する満足度を、年齢や職種、業種、企業規模の違いでも分析したが、大きな差は見られなかった。労働時間に関しても、1カ月平均が160時間(残業ゼロ)でも240時間(1日当たり平均4時間残業)でも、満足度はほとんど変わらない。

 今回の調査では、ITエンジニアの1カ月当たりの平均労働時間は187.7時間だった。仮に1カ月当たりの就業日数を20日、1日8時間労働とした場合、1日当たりの残業時間はわずか1.4時間となる。