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〔72〕学校の情報流出に見る情報教育改革の立ち遅れ前回は,ファイル交換ソフトを介した個人情報流出事件を取り上げた。本連載の第2回から取り上げてきたテーマだが,私物パソコンを使って仕事しなくても済むような職場環境の整備が進んでいるとは言い難い。今回は,私物パソコンなしでは業務が遂行できない状態で「悪意なき個人情報流出」が続く教育分野の現状を取り上げてみたい。
盗難・紛失後の二次被害防止策で立ち遅れる教育現場第53回で取り上げたように,教育分野における個人情報流出の多くは,職場の外での盗難・紛失である。以下,2006年11月以降の新聞報道記事から,教育分野の盗難・紛失による個人情報流出事件を挙げてみる。
残念ながら,公立の教育関係者が,日常的に利用している場所で盗難・紛失に遭い,個人情報が流出している状況は以前と変わっていない。また,民間企業で起きた盗難・紛失による個人情報流出事件報道の場合,第三者が保存情報にアクセスできないようなセキュリティ対応など二次被害防止策に触れるのが普通だが,教育関係の事件報道を見るとそれが見当たらない。個人情報流出が発生した時,事業者が外部へ公表する理由は,二次被害の防止と類似事案の発生回避にあるはずだが,うまく機能していないようだ。
情報教育改革の遅れで懸念されるIT人材市場への悪影響情報管理の観点から,公立学校での私物パソコンの業務利用問題は,市町村議会でも取り上げられている。だが,財政難を理由に1人1台配備態勢を実現できない地方自治体が大半を占めているのが実情だ。既設の業務用パソコンについても,ソフトウエア・ベンダーが既にサポートを打ち切ったOSを使用し続けているケースを耳にする。 さらに,今年の秋に全国の高校で発覚した必修科目未履修問題では,「情報」教科の授業を受けることなく卒業した生徒が多数いることが明らかになった。情報処理学会は「高校教科「情報」未履修問題とわが国の将来に対する影響および対策」を発表し,緊急提言を行っている。しかし,ICT(情報通信技術)の位置付け自体が生徒や教員に認識されていないようでは,日本のIT業界を担う人材の確保に悪影響を及ぼしかねない。 IT戦略会議が2006年1月に決定した「IT新改革戦略」では,「次世代を見据えた人的基盤づくり」の具体策として,教員1人1台のコンピュータ配備実現の目標年度を2010年としているが,このままでは「教育再生」どころか「情報後進国」に転落しかねない。事態は深刻である。 次回は,改正が予定されている経済産業分野における個人情報保護ガイドラインについて考えてみたい。
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