コスメトリックス(QoSmetrics)は,IPネットワーク上を流れるデータや音声,映像の品質を測定・管理できるシステム「NetAdvisor」「NetWarrior」を提供するフランスのベンダーである。日本では東陽テクニカなどが扱っている。コスメトリックスは製品提供だけでなく,映像サービスの品質を体感的な数値で示す指標「V-Factor」を提唱し,IP電話サービスのR値やMOS値に相当する業界標準化を目指している。製品のバージョンアップに合わせて来日した同社のイブ・コニウェイ会長に,システムの導入状況やV-Factorについて聞いた。(聞き手は加藤 雅浩=日経コミュニケーション)
NGNの時代にはQoSよりQoE
仏コスメトリックス
会長
イブ・コニウェイ
――コスメトリックス製品の顧客は。
フランス・テレコムやテレコム・イタリアが当社のシステムを採用している。IPTV(IP方式の放送サービス)でエンド・ツー・エンドの品質を保証するためだ。米AT&Tなど評価中の事業者もいる。
IPTVのような映像サービスやVoIP(voice over IP)による音声サービスの品質を判断するのはエンドユーザーだ。エンドユーザーがどう体感したかが重要となる。我々はこれを体験品質「QoE(quality of experience)」と呼んでいる。よく使われるサービス品質「QoS(quality of service)」がネットワークから得られたデータに基づくものとすれば,QoEはエンドユーザーが感じた良し悪しに基づくものとなる。エンドユーザーが感知するQoSがQoEであるといってもいい。
QoEを映像品質の指標として数値化したものが「V-Factor」だ。サービス事業者はV-Factorを見ることで,そのときの動画品質を客観的に知ることができ,品質を悪化させているのはネットワークの何かをつかむこともできる。
――V-Factorでは何を測定しているのか。
V-Factorは,映像品質尺度の一つであるMPQM(moving picture quality metrics)をベースとして,IPネットワーク向けに拡張したもの。ネットワークの障害とコンテンツの障害の両方を見る。
ネットワークの障害パラメータとして,IPネットワークにおけるパケットの損失率や遅延偏差,ジッタなどをリアルタイムに測定する。これはQoSのパラメータでもある。だからV-Factorを調べれば,QoSも分かるということになる。
もう一つのコンテンツの障害では,符号化のピクチャ・タイプ(I/B/P)や量子化情報などを調べる。例えばIピクチャが破損していた場合は,Bピクチャが破損した場合よりもダメージが大きいとする。
こうしたネットワークの障害パラメータとコンテンツの障害パラメータに加え,V-Factorでは人の視覚特性に基づいたパラメータも評価に組み込む。例えば,人の目は色の変化よりも輝度の変化に敏感なので,こうした点を考慮する。
なお,V-Factorを映像の標準的な評価指標にすべく,ITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)に働きかけている。
――日本市場への取り組みは。
次世代ネットワーク(NGN)時代を迎える日本市場には大いに注目している。今回のバージョンアップでIPv6対応としたのも,日本市場を意識してのこと。欧州におけるIPTVの成功体験を生かせればと思っている。