◆今回の注目NEWS◆

◎国税庁差し押さえ財産、ネットで競売・自民税調検討(NIKKEI NET、12月6日)
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT3S06007%2006122006  日本経済新聞は12月6日、国税の滞納者から差し押さえた美術品などの物品を、イ ンターネットオークションで公売(売却)する仕組みが来年度から始まる見通しだと 報じた。(編集部注:12月14日に自由民主党が発表した「2007年度税制改正大綱」に は具体的に盛り込まれていないが、自民党では「そうした議論はあった」としてお り、インターネット公売に向けての議論は進んでいるようだ)。

◆このNEWSのツボ◆

 国税庁が差押え財産をインターネットで競売し、処分の効率化と滞納額の圧縮を図 るとのことである。実際、東京都横浜市など多くの地方自治体で は、差し押さえはしたものの現金化が難しい品物や財産の処分を進めるために、ネッ トオークションの利用は進んでいる。国での試みは、むしろ「遅すぎた」というくら いかもしれない。

 ただ、実際に差し押さえたり、現物納付された財産や商品の量という意味では、国 は圧倒的である。国税庁が本格的にインターネット競売に乗り出せば、予想外のにぎ わいを見せる可能性も高いのではないだろうか?

 もう一点、注目すべき点は、このようにインターネット競売を導入している多くの 自治体は、わざわざ新しいオークション・システムを構築したりせずに、Yahoo!など の商業オークション・サイトとの連携で対応しているという点である。ネットオーク ションを巡っては、金銭の授受や商品の欠陥、盗品売買などの問題で何かとトラブル も多く、規制問題なども出ているのだが、公共機関が、こうした民間サイトと連携す るというのは、興味深いと言えば興味深い現象である。

 結局、市場での競争を勝ち抜き、生き残っていくために日々改良・改善されている 民間のサービスは使い勝手やセキュリティなどの面でも優れている…ということでは ないだろうか。後発の楽天などは、匿名性の高いエスクロ-・サービスを実現し、オ ークションに関わるトラブルを減ずるために高度な技術を実装してきているが、こう した技術開発は、当初予算一発、その後の改善が図りにくい公共のシステムでは実現 しにくいのではないだろうか。

 公共料金の納入や、各種の施設予約その他、「電子政府サービス」として、国や自 治体が頭で考えたものをそのまま実装し、結局、利用率が上がらないサービスが山ほ どあるが、こうした民間サービスとの提携・活用を考えてみれば、案外、突破口が開 けるかもしれない。

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はウッドランド社長、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営コンサルティング、IT戦略コンサルティングまで幅広い領域で活動する。