神戸製鋼所のIT企画部部長 青方 卓氏
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 神戸製鋼所が2005年度から「グループIT統合」に取り組んでいる。従来は事業部や子会社が独自に開発・運用してきた情報システムに、本社のIT企画部が横串を通そうという取り組みだ。主導的な役割を担っているのが、今春からCIO的なポジションを務める青方卓IT企画部長だ。

 青方部長は今年4月の就任までITにかかわったことはない。もともとは、化学の技術者。製鉄所でガスが発生するプロセスを研究していた。その後、研究開発の企画や予算策定といった、研究開発のマネジメントを覚えた。2004年に神戸製鋼がIPP(独立系発電事業者)事業に参入すると、環境アセスメント関連の業務に就いた。そして知的財産関連の部署などを経てCIOに就任したという異例の経歴の持ち主だ。

 青方部長が挑むグループIT統合は大きく2つに分かれる。「O project」と「G project」だ。前者は、「電子メールのドメインだけでも5つある」(青方部長)という現状から共通のIT基盤を作ることだ。後者は、セキュリティー強化や日本版SOX法への対応など。IT企画部と各カンパニーや関係会社のIT部門長が参加する「グループIT統合推進委員会」を中心プロジェクトを進めることになる。

 「いろんな業務をやってきた。やってやれないことはない」と青方部長は改革に自信を見せる。IT企画部が部に昇格したのは、青方部長の着任と同時。「初代CIO」として使命感に燃えている。「緊張感と危機感を強く持っている。集中できていたから就任からITに関する難しい本もずいぶん読めた」と話す。業績好調な神戸製鋼に追い風を吹かすつもりだ。

Profile of CIO

◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・IT企画部を担当する常務執行役員は、IT畑の人間ではないし、経営企画部や財務部なども見なければならない。できるだけ分かりやすく伝えることを心がけている。過去に地域住民に対して発電所の安全性を説いたり、機械のエンジニアに化学関連の説明をするといった業務に携わった経験が役に立っている。

◆ITベンダーに対して強く要望したいこと、IT業界への不満など
・システム子会社であるコベルコシステム(兵庫県神戸市)は日本IBMが51%の株式を持っている。IBMとはがっぷり四つに組んで付き合っていくことになる。今後もフランクにいろいろな情報を交換できる関係を築いていきたい。資本を受け入れて5年間で、お互いの強みや弱みが分かってきた。「教えてもらう」段階は済んだ。コベルコシステムも情報システム会社らしくなってきている。現在は、神戸製鋼関連と社外向けの仕事量の比率が半々にまでなってきた。

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・日本経済新聞
・神戸新聞
・日経コンピュータ
・日経ネットワーク

◆最近読んだ本
・『明日は誰のものか-イノベーションの最終解-』(クレイトン・M・クリステンセン、スコット・D・アンソニー、エリック・A・ロス 共著、ランダムハウス講談社)
・『戦略の本質 戦史に学ぶ逆転のリーダーシップ』(野中郁次郎他、日本経済新聞社)
・『ザ・ファシリテーター』(森時彦 著、ダイアモンド社)
・『仮説思考』(内田和成 著、東洋経済新報社)
・『内部統制今知りたい50の疑問―米国での実践経験から』(冨樫明 著、日経BP社)
・『甦るIT投資―実力を発揮する6つのキーポイント』(NTTデータビジネスコンサルティング 編著、日経BP企画)

◆仕事に役立つお勧めのインターネットサイト
・定期的に見ているサイトは特にない。

◆情報収集のために参加している勉強会やセミナー、学会など
・JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の「IT経営フォーラム」。業種は異なるが同じようなポジションの人と知り合いになれる。日本版SOX法やセキュリティーなどは共通する問題意識だ。

◆ストレス解消法
・週末に料理をすること。もともと化学出身で実験が好きだった。料理はその代わり。年に4回、親戚を招いて手料理でもてなす。限られた時間内で目標の料理を作る過程は、プロジェクトマネジメントと同じ。うまくできると達成感がある。海外の旅先で食べた料理を自宅で再現することもある。