アリゾナ州プレスコット・バレーの住民は,自分の自動車を「真夜中には運転しない車」として登録できる。警察は登録された車が夜中に走っているのを見かけると,盗まれた疑いがあるとして停止させる。

 「『The Watch Your Car』マーク制度は,車の所有者が自らアリゾナ州盗難車協会(AATA:Arizona Automobile Theft Authority)に登録する自主参加型のプログラムである。車の情報は,AATAが開発/運用する特別なデータベースに登録される。このデータベースは,自動車管理局(MVD:Motor Vehicle Division)と直接つながっている」

 「プログラムの参加者は,登録した車の前後の窓にWatch Your Carマークを付ける。このマークを掲げることで,車の持ち主は警察に対して『車が盗まれやすい午前1~5時の時間帯に,通常この車は使いません』と意思表示する」

 「警官は,Watch Your Carマークのある車がこの時間帯に動いているのを見つけると,停止させてドライバーに質問できる。警官がMVDのデータベースにアクセスすれば,盗難車かどうか調べられる。車の不正使用が確認できた場合,警察にはその場で所有者に連絡する権限もある」

 この制度への参加は完全に自由であるが,思わぬ深刻な影響をもたらす。警察が誤った情報(訳注:例えば,車が盗まれたのでなく,持ち主がたまたま午前1~5時に運転していた場合)の対処に追われると,警察が担当すべきほかの職務に割り当てる時間がなくなる。こういった場合にプレスコット・バレー当局が車の持ち主に罰金を科すのなら,この制度に対する私の異論はなくなる。罰金は高額である必要はなく,誤情報で生じるコストを相殺できる額でよい。家庭用セキュリティ・システムが誤った泥棒侵入警報を警察に自動通知した場合,家の持ち主が警察から負担金を請求されるのと全く同じだ。

http://www.pvaz.net/Services/police/watchyourcar.htm

Copyright (c) 2006 by Bruce Schneier.


◆オリジナル記事「Please Stop My Car」
「CRYPTO-GRAM November 15, 2006」
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◆Bruce Schneier氏は米Counterpane Internet Securityの創業者およびCTO(最高技術責任者)です。Counterpane Internet Securityはセキュリティ監視の専業ベンダーであり,国内ではインテックと提携し,監視サービス「EINS/MSS+」を提供しています。