「NGN(次世代ネットワーク)は企業や官公庁が情報システムを構築する際の前提を大きく変えるだろう。企業同士がネットワークをつないで情報を効果的に交換することを容易にする」。NECで通信・メディア企業のシステム構築を統括する富山卓二執行役員は、NGNの使いこなしが企業間の連携やビジネスに大きな差を生むと指摘する(写真)。
写真●NECの富山卓二執行役員 |
企業が他の企業とネットワークを接続して情報を交換する場合、比較的小規模で特定の相手と取り組むのが一般的だ。企業によってはインターネットに対するセキュリティ上の不安があるため、専用線など通信コストの高い回線サービスを利用しているケースが少なくない、といった事情があるからだ。
NGNは、インターネットのように一つの巨大ネットワークを複数の利用者で共有する形態のため、専用線に比べてユーザーへの提供コストを抑えることが可能だ。セキュリティも確保できる。具体的には、通信事業者がアクセス権限や利用する回線の接続先を認証し、ユーザー間を一対一でセキュアにつなぐことができる。また、通信帯域を制御してQoS(サービス品質)を保証することもできる。
富山執行役員はこうしたNGNの特徴が、各業種の事業に大きな影響を与えると分析する(表)。さらに「NGNが普及すれば、業種や業態を超えた様々な企業間で、情報をやりとりして連携するようになる」とも予測する。
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例えば、流通業の企業が銀行を買収して金融業に参入したり、保険会社が自動社会社と提携するといったケースが考えられる。それぞれの企業がNGNを利用していれば、通信事業者側の設定変更で、各社のネットワークを迅速に接続し情報システムを相互に活用できるようになる。関係する各社がNGNに移行し、ネットワークの基盤を統一するという選択肢もあるだろう。
富山執行役員は、官公庁でもNGNを使った連携が始まるとみている。「自治体や役所は個別のネットワークを構築しているケースが少なくない。NGNを利用して防災や治安の情報を交換すれば、国民の安全や安心を支えられる」。
もっとも、企業や官公庁がNGNを実際に使いこなして連携するには、NTTなど通信事業者がサービスの仕様をきちんと公開していくことが求められる。富山執行役員は「NECとしてもNGNを利用した企業情報システムについて、より具体的な将来像を提示するため検討を重ねている」と言う。