米Microsoftのセキュリティ分野における最大のニュースは,クライアント用ウイルス対策ソフト「Forefront Client Security」のリリースが間近に迫っていることだ。大規模~中規模企業を対象にしたForefront Client Securityは,Microsoftにとって欠けていたソリューションである。ユーザーは公開ベータ版を使って,この製品が自社に適しているかどうか評価できる。

 筆者は,11月に米国ボストンで開かれたForefront Client Securityを議論する説明会で,MicrosoftのSecurity,Access,Solutions部門のメンバーと話しをした。Forefront Client Securityは,数年前から登場するといううわさが流れていた製品である。Forefront Client Securityは集中管理が可能なウイルス対策ソフトであり,Active Directory(AD)やグループ・ポリシーを利用して,デスクトップPCやノートPCなどのクライアントPCを,ウイルスやスパイウエアなどのマルウエア(悪意のあるソフトウエア)から保護できる。Forefront Client Securityには,「Forefront Client Security Management Console」という管理ダッシュボードと,保護するすべてのクライアントPCにインストールする必要があるエージェント・ソフトから成り立っている。

 技術的な見地に立つと,Microsoftはセキュリティ対策製品を上手く扱っているといえるだろう。Forefront Client Securityは,「Windows Live OneCare」や「Windows Defender」,「Forefront Security for Exchange(旧Sybari Antigen)」といった他のマルウエア対策ソリューションと同じバックエンド・サーバーを使用する。なお,Forefront Security for ExchangeはMicrosoft Exchange Server 2007用にまもなく出荷される予定だ。1つのバックエンド・サーバーを使うということは,Forefront Client Securityが出荷されるまでに,実際には世界中で多くの人が既にこの製品の使っているとも言える。

グループ・ポリシーを使った配布も容易

 Forefront Client SecurityにはMicrosoftのエンタープライズ製品によくある機能がすべて盛り込まれている。このコンソールにはたくさんの機能があり,使い勝手がよく,グループ・ポリシーを使ってADの組織単位(OU)にForefront Client Securityエージェントを簡単に配備できる。デフォルトでは,ユーザーはForefront Client Securityがバックグラウンドで動作していることを意識することはない。さらに,ダイアログ・ボックスを一切表示させないようにForefront Client Securityを設定することもできる。

 Forefront Client Securityの定義ファイルは,Windows Server Update Services(WSUS)を使って社内で配布できる。WSUSが使えない場合に,接続先をMicrosoft Updateに自動的に切り替えるようにも設定できる。また,単純にすべての更新を自動インストールするようにも設定できる。筆者は自動インストールをお勧めするが,手動で更新をインストールするように設定することも可能だ。もちろん,クライアント・エージェントは,定義ファイルが更新されているかどうか,定期的に確認する。管理者は,毎朝Forefront Client Security Management Consoleでセキュリティ・サマリー・レポートを確認して,前日の様子をチェックできる。傾向に関する情報もあり,デフォルトでは30日分が表示される。

ベータ版のダウンロードが可能に

 最近,Forefront Client Securityの公開ベータ版がMicrosoft Webサイトから入手できるようになった。Microsoftはこの製品の最終版を,2007年の第2四半期に出荷する予定にしている。Microsoftはまだ価格を発表していないが,Forefront Client Securityはサブスクリプション(使用料)モデルで提供される予定で,ユーザーはデバイスごとに年単位でライセンス料を払うことになる。このライセンス料を払うと,契約期間中にリリースされる定義更新とForefront Client Securityの新しいバージョンの使用権を随時受け取れる。

 読者の皆さんには,Forefront Client Securityをご自身で検証されることをお勧めする。この製品が,小規模事業所に適しているかどうかが,唯一の疑問である。Microsoftは,小規模事業所向けにクライアント用ウイルス対策ソフトをリリースする予定ではない。家庭や小規模事業所などのローエンド環境向けには,OneCareのようなソリューションを提供しているからだ。もちろん,Forefront Client Securityの対象は大規模~中規模事業所だ。そして,残念ながらMicrosoftの「Small Business Server(SBS)」のユーザーに向けた製品が,今のところ存在しない。MicrosoftはSBS向けに,より普及版のセキュリティ・ソリューションを投入する予定であり,将来的には,Forefront Client Securityの機能とSecurity for Exchangeを統合したような製品をリリースするかもしれない。今後の動向に注意が必要だ。