109にほど近い、渋谷文化村通りに表れた魔物の影
109にほど近い、渋谷文化村通りに表れた魔物の影
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参加者の影が伸びる演出も。唯一伸びていないのはネット参加のアバター
参加者の影が伸びる演出も。唯一伸びていないのはネット参加のアバター
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 BIG SHADOW PROJECTは2006年12月7日から9日の3日間、渋谷区道玄坂2丁目パーク王駐車場内に設置のイベントスペースでインスタレーションアートイベント「interactive wall BIG SHADOW」を開催した。本イベントは渋谷のビルに巨大な影を投影するという趣旨で、会場には巨大なライトテーブルのような光る壁を設置し、参加者がその壁の前で好きなように動けるスペースが設けらた。参加者の動きは駐車場脇のプロジェクター設置タワーから、幅27メートル、高さ45メートルの大きさでビル壁面に投影される。結果、自分の影が巨大化して壁に映っているように見える。ビルに移る自分の影を見るだけでも新鮮だが、さらに飛び上がったり腕を振り回すなど大きな動きをすると、その動作をきっかけに、参加者の影の背後からさらに巨大なドラゴンやミノタウロスといった魔物の影が表れ、参加者の影に襲いかかってくる。この効果は参加者の挙動に反応して動きのパターンを変えるプログラムによって実行しているという。影には本体が付きものだという認識が体に染みついているせいか、実体のない魔物たちは本体に対する想像力を余計にかき立ててかなり怖い。また、日頃意識する機会が減ってしまった影に触れることで、懐かしい友達と再会したような気分になれた。

 参加者や魔物の影が入り乱れる投影映像の中には、時折イベント会場にはいない子供の影が登場する。この「影だけの人」はネットを通じてユーザーがその挙動をコントロールしているアバターの影だ。アバターはイベント開始時のみネット上から操作可能で、ジャンプや腕を上げるなどの動作が指示できる。同時に150人が参加できるこのプログラムはFlash Communication Serverから配信しているという。実体の見えない魔物も怖いが、夜の渋谷で子供の影だけを見るのもはっとするものだ。

 本イベントの協力者は2006年「アルス・エレクトロニカ」グランプリ受賞者のアートユニットEXONEMO、インタラクティブメディアアワードで数々の賞に輝くTHAの中村勇吾、ネットメディアの広告を手がけるNON-GRID、演出、デザインプロデュースのPROJECTOR、テクニカルサポートのmashstudiom29970/ETHER、デザインプロダクションのIMG SRC。プロジェクト全体はGT INC.が取り仕切っている。

 また本イベントは12月7日発売のXbox 360用RPGゲームソフト「ブルードラゴン」に触発された活動という経緯もある。ゲームの主人公と行動を共にする影が、次第に魔力を持ち始めるという内容で、「心の光が影をつくる」というメッセージが込められている。イベント上の表現とゲームの内容には大きな関連はないが、話題作りには一役買っているようだ。また、影をモチーフとした理由について、GT INC.の工藤靖久プロデューサーは「子供の頃は誰でも影を相手に遊んだ経験があるはず。イベントに参加すると童心に帰れるのも面白い。イベントは夕方の5時から11時30分まで開催しているが、夜が深まってから集まりだす会社帰りのサラリーマンの反応が、見ていて新鮮なほどだった」と語った。人間が「相互作用(インタラクティブ)」を発見するのは子供の頃に影と出会った瞬間なのだ。テクノロジーが実現した心に残る瞬間だった。