富士通ソフトウェアテクノロジーズ(富士通ST)は、GPS(全地球測位システム)とアクティブ型無線ICタグを利用した位置検知システムを開発した。GPSのアンテナを内蔵したアクティブ型ICタグを利用して、屋外の広い範囲における位置検知を容易にした。アクティブ型ICタグだけを使う同社の現行システムよりも、リーダーの設置数を減らせるといったメリットがある。ICタグの価格は、2万円程度になる見通しである。

 富士通STが開発したシステムは、位置情報の検知をGPSが担当し、アクティブ型ICタグはその位置情報をリーダーに送信する役割を担う。ICタグには、ID番号だけが書き込んである。具体的な位置検知の仕組みを見ると、まずGPSによって経度情報と緯度情報を取得し、それらの情報をICタグ自身が位置情報に変換する。次にICタグは、変換した位置情報をID番号と一緒にリーダーに送信する(図1)。

図1 GPS対応ICタグを用いた位置検知の仕組み

特定小電力無線タイプのICタグを採用

 使用しているアクティブ型ICタグは、429MHz帯の周波数に対応した製品(特定小電力無線タイプ)である(写真1)。そのためICタグとリーダー間で、「200m以上の通信距離を確保できる」(富士通STユビキタス事業部ユビキタス統括部)という。

写真1 GPS機能を搭載したアクティブ型ICタグの試作品

 同社はすでに、300MHz帯対応のアクティブ型ICタグ(無線局免許が不要の微弱電波タイプ)を利用した屋内向けの位置検知システム「Tag Locator」を発売している。この現行システムでは、ICタグとリーダー間の通信距離は30m程度である。屋外の広い場所で使用するにはリーダーの設置台数を増やす必要があるため、リーダーの設置コストがかさむほか、設置場所を確保するのが難しいといった問題があった。

 これに対して今回の新システム「Tag Locator V2」では、1台のリーダーで少なくとも半径200mのエリアをカバーできるため、リーダーの設置数を現行システムより大幅に減らすことができる。位置検知の精度は3~5m(GPSの測位精度)であり、現行システムと同水準を確保している。ICタグに搭載した電池の寿命(単4型乾電池を4本使用した場合)は、1日に1回位置検知を行うと数カ月になるという。

 こうしたシステムを富士通STは、駐車場における車両管理や空港における設備管理、港湾におけるコンテナ管理などの分野に売り込む計画だ。いずれも、屋外において検知の対象エリアが広く、特定の時間に位置情報を知りたいといった利用場面を想定している。例えば屋外にある中古車の販売会場において、車両に今回のICタグを取り付け、会場内にリーダーを設置すれば、目的の車両をすぐに探すことができる。



本記事は日経RFIDテクノロジ2006年8月号の記事を基に再編集したものです。コメントを掲載している方の所属や肩書きは掲載当時のものです