英国のヒースロー空港は,税関の旅客身元確認で,虹彩によるバイオメトリクス(生体認証)装置の試験を行っている。

 生体認証について,以前記事を書いたことがある。その中では,生体認証がどのような場面だと有効で,どのような場面だと役に立たないかを論じた。「生体認証は強力で便利であるが,『鍵』にはならない。読み取り装置から検証装置に至る経路が信頼できる状況であれば,生体認証は便利だ。こうした場合には,ユーザー固有の(指紋や虹彩といった)識別子さえあれば,本人かどうかを確認できる。鍵としての特徴――秘密性や無作為性,更新/廃棄可能といった要件――が必要な場合は使いにくい。生体認証はユーザー固有の識別子であって,秘密ではない」

 ヒースロー空港で試験中のシステムは,生体認証のうまい活用例だ。検査対象者から読み取り装置,検証装置までの信頼性を確保している。検査を受ける人物が偽の眼球を使おうとしても,すぐに露呈したり疑われたりする。検証装置に対しては,虹彩情報をある基準データと照合するよう求め,読み取った虹彩情報から人物を特定することは要求しない。このシステムに秘密性や無作為性は不要であり,鍵としては使わない。さらにこの生体認証システムは,税関検査の迅速化につながる可能性もある。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/1808187.stm
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◆オリジナル記事「Heathrow Tests Biometric ID」
「CRYPTO-GRAM November 15, 2006」
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◆Bruce Schneier氏は米Counterpane Internet Securityの創業者およびCTO(最高技術責任者)です。Counterpane Internet Securityはセキュリティ監視の専業ベンダーであり,国内ではインテックと提携し,監視サービス「EINS/MSS+」を提供しています。