誰でも使える画面を重視

イオンのIT戦略を担う縣厚伸・常務執行役IT担当
イオンのIT戦略を担う縣厚伸・常務執行役IT担当

 イオンの取り組みにはいくつかの特徴がある。第1に、使いやすさにこだわったことだ。新システムでは独SAP社のERP(統合基幹業務)パッケージを採用しているが、店舗従業員の目に触れる画面は徹底して独自に作り込んでいる。その基盤として、日本ブロードビジョン(東京・渋谷)のウェブ画面構築ツールを採用した。

 例えば、レジ袋などの消耗資材を発注するための「資材発注システム」では、従来は電話やファクスなど資材によって発注方法が異なっていたものをシステムに一本化。担当者別画面に、自分が管理すべき資材だけを表示するなど、従業員が操作に迷わないように細かな制御をしている。店舗からの発注データを本社で取りまとめることで、購買単価の引き下げにもつなげている。

 「新システムは、コミュニティ社員にも使ってもらわなければならない。欧米系のパッケージソフトそのままでは書式のイメージを再現しにくい」(縣常務)

 店舗の主力は「コミュニティ社員」と呼ぶ主婦らのパート社員が担う。画面設計にはコミュニティ社員が参画。マニュアルを読まなくても済むように、画面上にかなり細かな説明が表示される。マウスの使い方などを教えるパソコン講習会も延べ10万人以上が受講した。

 2つ目の特徴は、進ちょく管理機能を重視したこと。システム化した作業には、計画と実績の対比などを表示する画面を付けた。

 例えば、勤怠管理では、従来の紙の出勤簿を廃止し、勤務実績は従業員別のID(識別符号)カードを読み取って記録するようにした。勤務計画も電子化し、売り場の管理者は従業員別に「9時から12時は補充陳列」「12時から13時は清掃」といった詳細な作業計画を立てられるようになった。

 こうしたデータを集計して、個人別、売り場別、店舗別などで売り場作業の計画・実績を表示する進ちょく管理画面を用意した。業務受託センター側では、法令や就業規則などに沿った労務管理に活用。店舗側でも、ある売り場の人件費が計画を超えそうなら従業員の勤務時間を抑える、といったやり繰りをデータに基づいてできるため、販管費を抑えやすくなった。

●店舗後方事務支援システムの機能
●店舗後方事務支援システムの機能
複雑な従業員の勤務管理を紙から電子化。労働関連の法令順守も徹底しやすくなった
レジ袋などの資材は店舗から電子発注し、本社で一括購買。計画の進ちょく率も一目で分かる

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グループの内部統制強化も

 3つ目の特徴は、新システムや業務受託センターをグループの経営基盤として活用していることだ。イオンには、約160社のグループ企業があるが、業務受託センターでグループ企業の間接業務を受託する取り組みを始めている。既に、経理業務は24社、給与保険業務は6社から受託している。グループ企業は業務プロセスや勘定科目体系などをイオンに合わせ、情報システムもイオン本社のものを利用する。

 これによって、グループとしての内部統制の確保も目指している。「同じグループの小売業でも、企業ごとに業務ルールはかなり異なっている。日本版SOX法(企業改革法)への対応も考えると、無意味な差は無くしたい」(縣常務)

 昨年8月には、業務受託センターや情報システム部を対象にISMS(情報セキュリティーマネジメントシステム)の認証を取得。内部統制の前提となる情報セキュリティーも強化している。

●イオンにみる間接業務改革のポイント
●イオンにみる間接業務改革のポイント

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