11月30日に開催された、福助のストッキングの新商品「f-ing/MOTESTO」の記者発表会。20代女性に人気のファッション誌モデル、押切もえ氏(左)と蛯原友里氏が登場し、自身でプロデュースしたこの新商品への思いを語った
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同じく「f-ing/MOTESTO」発表会での福助の吉野哲社長。「10代~20代の女性にもっとストッキングを履いてほしい」と語った
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 総合レッグファッション・メーカーの福助(東京・渋谷区)が、20代の女性を中心に人気の携帯電話向けウェブサイトやファッションモデルを活用して、ストッキングの新市場開拓に本格的に動き出した。「エビちゃん」と「もえちゃん」がプロデュースする新商品を、数量限定・店舗限定で発売し始めたのだ。2007年2月には全国での本格発売に踏み切る。
 
 エビちゃんは、女性ファッション誌「CanCam(キャンキャン)」のモデルとして知られる蛯原友里氏。もえちゃんは、同じく押切もえ氏のことだ。特に2005年から2006年にかけて、2人がCanCam誌上で身にまとうファッションアイテムが20代の女性を中心によく売れている。昨年末から日本マクドナルドがCMモデルにエビちゃんを起用し、女性客の増加によって「えびフィレオ」バーガーがヒットしたこともまだ記憶に新しい。
 
 福助の吉野哲社長は、「若い女性から絶大な支持を得ている2人を起用し、等身大の商品作りをすることで、10代~20代の女性にストッキングをもっと履いてもらいたい」と語る。実は90年代の「ナマ脚ブーム」がきっかけで、現在の10代~20代はストッキングをあまり履かない女性が多いのだ。

 12月1日に発売した新製品「f-ing/MOTESTO(エフィング/モテスト)」は、エビちゃんともえちゃんがデザインや機能の企画から商品のプロモーション活動まで関与している。福助本社で2人が参加する会議を7月から11月に計15回ほど開催。1回あたり2~3時間も議論した。11月30日の記者発表会の席上では、エビちゃんが「自宅で何度もデザインを描いたり、試作品をいくつも持ち帰って履き心地を試したりしました」と、もえちゃんは「締めつけ過ぎないなど機能面にも気を配り、毎日履いてハッピーになれるものを意識しました」などと述べている。

 こうして完成した商品は、エビちゃんモデル、もえちゃんモデルがそれぞれ6タイプずつ。例えば、オーストリアのスワロフスキー社のクリスタルガラス製ビーズで描いたハートやリボン、雪の結晶などのワンポイントをアンクレット風にあしらったモデルがある。

7000円強の高級品も売れ行き好調

 さらに12月の発売に先駆けて、ゼイヴェル(東京・港区)グループが運営する女性向けファッションサイト「girlswalker.com」(携帯電話向け)と「fashionwalker.com」(パソコン向け)でモテストの商品化までの道筋を紹介。両サイトはもともとエビちゃんともえちゃんを主要モデルとして起用しており、2人の女性ファンからのアクセスが多い。モテストの宣伝にはうってつけだった。
 
 吉野社長の思惑通り、滑り出しは順調のようだ。12月1日からgirlswalker.comなど3サイトと丸井の11店舗、福助直営の4店舗に限定してモテストの発売を始めたが、7350円もする1000足限定の2タイプの高級モデルが売り切れ間近。1050円~1890円の10タイプの普及モデルも順調に売れているという。現在までのところ実店舗ではなくサイトで購入する消費者が約65%を占め、社内での予想以上にサイトが健闘している。高級モデルは8割がサイトでの販売である。
 
 福助は民事再生法の適用を申請するなど2003年までは瀕死の状態だったが、再生ファンド会社MKSパートナーズ(東京・千代田区)の支援を得て、成長軌道に戻りつつある。伊勢丹のカリスマバイヤーとして知られた藤巻幸夫氏から2005年4月に社長職を任された吉野氏は現在、「2007年1月期決算は増収増益の見通しで、会社に勢いが出てきた。1~2年後をめどに上場する準備を始めた」と、手応えを得ている様子だ。

 吉野社長は、伊勢丹で藤巻氏と同期であり、後にサザビーリーグの出資を受けて新会社エストネーション(東京・渋谷区)を立ち上げた経歴を持つ。実は、今回のゼイヴェルとの強力なタッグも、吉野氏のアパレル業界での人脈抜きには語れない。モテストの一連のプロジェクトは、伊勢丹の後輩で現在はトランジットジェネラルオフィス(東京・港区)の社長である中村貞裕氏が、ゼイヴェルの大浜史太郎社長を吉野氏に紹介したことをきっかけにスタートした。