◆今回の注目NEWS◆

◎本間政府税調会長、納税者番号制導入に意欲(NIKKEI NET、11/29)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20061129AT3S2901U29112006.html

【ニュースの概要】政府税制調査会(首相の諮問機関)の本間正明会長は、11月29日に行われた日本記者クラブでの講演で納税者番号導入に強い意欲を示した。


◆このNEWSのツボ◆

 安倍政権で政府税制調査会長に就任した本間正明教授は、実効税率引き下げ論者と して知られている。確かに、今や世界各国は、企業の国際競争力強化、さらには、国 際的な企業誘致をも視野に入れて、法人の実効税率を引き下げる方向にあり、我が国 の実効税率40%というのは、国際的にも高い水準である。

 ただ、「景気は長期に上昇しているが、生活実感として好景気が感じられない」と いう論調が一般的で、また、中期的には消費税率引き上げが不可避とされている中 で、法人税率の引き下げだけが強調されるという状況は、世論の感情を考慮すれば好 ましくはない。そこで、納税者番号制の導入や租税特別措置の抜本的見直しを通じ て、課税ベースを拡大し、減収分を補うことも必要…ということのようである。

 筆者などは、もともとサラリーマンであるし、1980年にグリーンカード導入を巡っ て大議論がおきた時にも、なぜこんな良い制度が反対されるのか…と思ったクチであ る。したがって、納税者番号制に何の反対もない。もともとグリーンカード制度自体 は、少額貯蓄利用者の名寄せのために提案されたものであるが、実際上の国民総背番 号制とか、納税者番号につながる…と言うことで制度はつぶれてしまった。しかし、 クロヨン(課税対象となる所得の捕捉率が、給与所得者は9割、事業所得者は6割、農 業所得者は4割)といったセリフが公言される中で、こうした不公平が温存されたま まであるのも妙な話である。中小企業や農業従事者にとって負担…という話もある が、それではサラリーマンの立場はどうなる…という話である。

 考えてみれば、住基カードの導入の際にも、「納税者番号としては使わない」とい う点に随分、神経を使っていた。しかし、住基カードを用いて、納税者番号も、社会 保険(年金)番号も一括管理できるようになれば、課税の公平性は担保されるし、年 金の掛け金未納問題も簡単に解決できるように思われる。

 せっかく、こうした提案が出てきたのだから、この際、すべての議論を振り出しに 戻して、「最も公平で効率的な仕組み」について、真摯に議論してみてはどうだろう か? そうすれば、「利用できない電子政府、IT投資の無駄使い」という問題も、か なりの程度解決されると思うのだが…。

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はウッドランド社長、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営コンサルティング、IT戦略コンサルティングまで幅広い領域で活動する。