マイクロソフト主導で10月12日にスタートした「ブログで離島応援計画」には,多くのIT技術者が離島を支援するシステムに関してユニークなアイデアを応募しています。このプロジェクトは,隠岐の島(島根県),トカラ列島(鹿児島県十島村),式根島(東京都新島村)の3つの離島で,過疎化などのそれぞれの悩みをITで解決すべく,アイデアの公募・選定と導入・稼働を順次行うものです(詳細は11月6日付の本欄「IT技術者は離島のSOSを救えるか」参照)。すでに隠岐の島では実際のシステム導入がスタート。トカラ列島ではシステムの選定が終了し,式根島でもアイデアの応募が始まりました。

 このプロジェクトがユニークなのは,島が抱える問題点やニーズ,IT技術者のアイデア,各離島間の進ちょく状況など,すべての情報がマイクロソフトのブログスペース上でやり取りされることです。プロジェクト開始から2~3週間でブログへのアクセス数は7~8万件程度に上り,隠岐の島のケースでは,アイデアレベルの応募が約50件,具体的なシステム提案が約20件寄せられたということです。ブログでは,複数のアイデアやシステム提案を横断的に閲覧できるため,選考プロセスの過程でレベルアップしていけることに特徴があります。複数のソフト技術者による共同開発スタイルである「オープンソース」を,アプリケーション・レベルにまで広げた格好だといえるでしょう。

 このようなプロセスを経て選ばれた「優秀システム案」とは,どのようなものか,簡単に紹介しておきましょう。

 まず,隠岐の島で導入されるシステムは「隠岐レンジャー」。自然が豊かな隠岐の島の魅力を,地図ベースの図鑑のように表現するものです。例えば,写真をデジカメで撮影してシステムに登録すると,リアルタイムに撮影場所と地図情報と関連付けします。写真撮影や情報収集には,島の子供たちや旅行者が参加します。このシステムを運用していくと,「昆虫」「海の生き物」などに関する図鑑が自ずと出来上がるというわけです。システムには,島の子供たちに隠岐の島の自然を知ってもらう狙いもあります。2007年3月末をメドに稼働させる予定です。

 隠岐レンジャーを発案したのは,Webサイト「海ずかん」を運営する学生ベンチャーの岩瀬晃啓さん。システム導入企業は,日本沿岸資源研究所に決まりました。

 一方,トカラ列島で優秀システム賞に選ばれたのは「フェリー予約抽選システム」。点在する島々を結ぶ島民の足であるフェリーを,ブロードバンドの活用で効率的に利用できるようにすることが目的です。

 マイクロソフト主導の同様のプロジェクトは,実は今回が2回目です。昨年は優秀システム案を選定するまでにとどめ,実際にシステムを導入したわけではありません。その意味で今回は大きく前進したと言えますし,島民の皆さんの期待も高まっているでしょう。

 このような取り組みは本来,行政主導で行われるべきものかもしれません。しかし,離島の限られた予算だけで実現できることはごくわずかです。今回のブログによるIT技術者コミュニティーをきっかけに,民主導の新たな展開に期待したいところです。