ストロベリーコーンズが新展開するナポリピッツァの宅配店「ナポリの窯」
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必須(1)ナレッジシェアシステム
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必須(2)GIS(地図情報)システム
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必須(3)ネットワークカメラシステム
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 宅配ピザのフランチャイズチェーン(FC)であるストロベリーコーンズ(東京・港区)が2005年2月から展開しているナポリ風ピッツァ専門の宅配店「ナポリの窯」が店舗網を拡大している。現在までに、既存のストロベリーコーンズ店舗からの転換や新規出店などで55店舗を構え、3年後には300店まで増やす計画だ。今後ストロベリーコーンズは同名の店舗とナポリの窯の2つのブランドを柱に事業を展開していく。

 日本IBM出身の宮下雅光社長が創業したストロベリーコーンズは、宅配ピザ業界の中でも特に積極的に情報システムを活用している企業である。新しいコンセプトのナポリの窯を出店する際には、さらに踏み込んで、店作りで必須となるシステムの「3点セット」を用意した。

 それが(1)ナレッジシェアシステム、(2)GIS(地図情報)システム、そして(3)ネットワークカメラシステムの3つである。同社は既存のストロベリーコーンズ店舗でも2004~2005年にかけて、これら3つのシステムを使い始めてきたが、すべての店舗に3点セットで導入していたわけではなかった。だがナポリの窯は2005年の立ち上げと同時に、3つのシステムを漏れなく配備することにした。

 (2)(3)はストロベリーコーンズが数億円かけて3年がかりで独自開発したものであり、他社に外販もしている。(1)はFC店のコンサルティング会社であるフランチャイズアドバンテージ(東京・港区)が開発したものをカスタマイズして導入している。

天井のカメラでピザの仕上がりまで見られる

 (1)はナレッジシェアシステムといいながら、実体は各店舗の経営数値管理システムに近い。日・週・月次の売り上げや利益の管理はもちろんのこと、従業員の勤怠管理、ピザを作り始めてから配達までにかかった時間や時間帯別の配達遅延件数の管理、各家庭の郵便受けにチラシをまいた数(ポスティング数)とその反応具合である戻り率、顧客の新規獲得数やリピート数、テイクアウト数などを一覧できる。

 もちろんナレッジシェアシステムの名の通り、店舗で培ったノウハウをシステムに登録して横展開するナレッジ共有機能も備えている。店舗を巡回して指導するスーパーバイザーは複数店の数値を閲覧でき、どこにいても店舗の経営数値が分かる。

 一方、(2)は(1)と表裏一体の関係にグラフィカルツールである。(1)の各数値を店舗周辺の地図情報に落とし込んで、視覚的に販促効果を確認できる。例えば、商圏に対して、どのエリアから何件注文が来ているか、チラシをまいたエリアはどこで、何件反応があったのかなどを色分けしたり、グラフを重ねて地図上に表示できる。顧客数が減ってきたエリアには重点的にチラシをまくといった次の一手を決めるのに欠かせない仕組みだ。

 店長によっては、まずこのGISシステムで店舗の強みと弱みの全体像を視覚的につかみ、詳しく確認したいエリアについては、(1)で具体的な数値を確認するといった使い方をしている。

 (3)は店舗の天井に取りつけた、リモート操作できるネットワークカメラのことだ。カメラを通して、本部から店舗の店員がピザを作る様子を見ながら遠隔指導したり、店舗オーナーが自店を確認するといった使い方ができる。カメラはズームを使えば、ピザの仕上がり具合や店内のサラダの鮮度まで確認できるほどよく見える。つまり、遠隔地から店舗の運営状況をカメラでつぶさに確認できるわけだ。

 (1)~(3)を組み合わせると、例えばスーパーバイザーは(1)で担当店舗の経営数値を見て、業績が良い店舗と悪い店舗を選び出し、(2)で良い店舗と悪い店舗の販促状況を視覚的に確認し、(3)でカメラに写る店員の動きや商品の鮮度管理などを比較することができる。そこで見えてきた店舗のよし悪しをナレッジとして(1)に登録し、全店に徹底していく。その繰り返しになる。

 カメラにはマイクも付いているので、本部が店舗の天井から店員に話しかけ、ピザの作り方を指導したり、逆に店員から質問を受けることもできる。ナポリの窯ではこれを「天の声」と呼んでいる。