マイクロソフトの「GroupBoard」は,「サイボウズOffice」などに対抗すべくマイクロソフト日本法人が独自に開発したWebグループウエアである。2001年3月に第1世代がリリースされ,11月21日には第4世代となる「GroupBoard Workspace 2007」がリリースされた。新バージョン最大の特徴は,完全に無償化されたことである。

 GroupBoardの第1世代は「Exchange 2000 Server」の追加製品という位置付けであり,Exchange 2000 Serverのユーザーしか利用できなかった。第2世代で2002年にリリースされた「GroupBoard 2.0」からは単独製品となった。GroupBoard 2.0自体は無償で配布されたが,運用するサーバーに「FrontPage 2002」のコンポーネントである「SharePoint Team Services」や「Office XP」をインストールする必要があった。

 「Office 2003」と同時期の2003年10月にリリースされた「GroupBoard 3.0」は有償(2万9800円)になり,アーキテクチャも一新し,Windows Server 2003に標準搭載されているコラボレーション用のアドオン・ソフト「Windows SharePoint Services」上で動作するようになった。

 今回リリースされた第4世代の「GroupBoard Workspace 2007」(写真1)は,マイクロソフトのWebサイトで,無償でダウンロードできる。動作させるためには,Windows Server 2003と,コラボレーション用のアドオン・ソフトの新版「Windows SharePoint Services 3.0」,「.NET Framework 3.0」,「SQL Server 2000/2005」が必要だ。

写真1●GroupBoard Workspace 2007の画面

 ただし,Windows SharePoint Services(WSS) 3.0や「SQL Server 2000 Desktop Edition」,「SQL Server 2005 Express Edition」も無償でダウンロードできるので,GroupBoard Workspace 2007を利用する上で必要となるライセンスは,Windows Server 2003のサーバー・ライセンスとCAL(クライアント・アクセス・ライセンス)だけだ。つまり,Windows Server 2003でActive Directoryやファイル・サーバーを運用しているなら,GroupBoard Workspace 2007は無償で利用できる。

中小企業や部門での使用に特化した,SharePoint Serverの姉妹製品

 GroupBoard Workspace 2007の基盤となっているWSS 3.0は,その名が示す通り,マイクロソフトが「Officeサーバーの中核」と位置付ける「Office SharePoint Server 2007」と関連がある。写真2のように,WSS 3.0はファイル共有機能やセキュリティ機能といった,コラボレーションの核となる機能を提供する基盤ソフトウエアである。SharePoint Server 2007は,WSS 3.0を基盤に大企業向けのポータル・サイト機能や検索機能を追加する。

写真2●Windows SharePoint Services 3.0とSharePoint Server 2007の関係

 GroupBoard Workspace 2007も同じように,WSS 3.0を基盤に中小企業やグループ向けのグループ・ウエア機能を追加している。つまり,GroupBoard Workspace 2007とSharePoint Server 2007は「姉妹製品」なのである。

 GroupBoard Workspace 2007の機能を見ていこう。GroupBoard Workspace 2007ではWebブラウザを使って,Officeで作成したドキュメント・ファイルやグループのスケジュールなどを共有できる(写真3)。「2007 Office system」との連携機能も強化されており,GroupBoardのドキュメント・ライブラリにある文書をOutlook 2007の個人用フォルダに同期したり,GroupBoardのスケジュールをOutlook 2007の予定表と同期したりもできる。

写真3●GroupBoard Workspace 2007の主な機能

 SharePoint Server 2007と異なるのは,「施設予約」(写真4)や「グループ掲示板」,「行き先掲示板」や「タイム・カード」「回覧板」「電話メモ」「携帯電話からのアクセス」といった,日本のユーザーが好む機能が搭載されていることである。

写真4●Exchange Serverのように施設や設備の空き時間を確認しながら予約ができる

 例えば行き先掲示板は,ユーザーの行き先を入力しておくWebページである。タイム・カードは,ユーザーが出社時と退社時にWebサイトのボタンをクリックしておけば,出社時刻と退社時刻が集計される機能だ。回覧板や電話メモはその名の通りの機能だが,ユーザーによる回覧板やメモの未読・既読をWebページから確認できる点が特徴。これらGroupBoard Workspace 2007が提供する機能は,追加ソフトなしに携帯電話のブラウザから利用できる(GroupBoard 3.0では追加ソフトが必要だった)。

 GroupBoard Workspace 2007では,ユーザーを部署単位のツリー構造で管理できる(写真5)。ディレクトリはActive Directoryとは別になっているので,グループの実態に合わせたユーザー管理が,ユーザー自身の手によって行える。

写真5●部署単位のツリーからユーザーを選択できる

 このほか,SharePoint Server 2007が「ブログ」や「Wiki(複数ユーザーが編集できるWebページを提供するコンテンツ・マネジメント・システム)」といったインターネットで流行する新しい情報共有技術に対応したように,GroupBoard Workspace 2007でも,グループのメンバーだけが閲覧・編集できる「Wiki」が運用できるようになった。

 GroupBoard Workspace 2007はWindows Server 2003があれば無償で利用できる。SharePoint Server 2007のような大規模アプリケーションを導入できない中小企業や大企業の部門に適したWebグループウエアである。またSharePoint Server 2007の基本的な機能(ドキュメント共有機能など)も備えているので,SharePoint Server 2007の「お試し版」として使ってみるのもいいだろう。