日本電信電話(NTT)が、2006年12月にグループで始める次世代ネットワーク(NGN)のトライアルで使う機器の主要な調達先が、日経コンピュータの取材で明らかとなった()。

図●NTTがNGNのトライアルで選定したとみられる主な通信機器メーカー
図●NTTがNGNのトライアルで選定したとみられる主な通信機器メーカー
すべて日経コンピュータの取材に基づく。コア・ルーターはNECと富士通が米社の機器を納入する形態を採ったもよう[画像のクリックで拡大表示]

 NGNに接続してくるユーザーの回線を制御するためのSIP(セッション開始プロトコル)サーバーは、NECと沖電気工業から調達するもようだ。SIPサーバーはIP電話で使う「呼制御サーバ」としての標準規格の機能に加え、メッセージや映像のやり取りなど電話以外の拡張機能の制御も担う。NGNを使うアプリケーションが電話以外に広がるにつれて、SIPサーバーの需要増が見込まれる。

 一方、NGNの幹線となるコア・ネットワークを構成する大型のルーター装置は、シスコとジュニパーネットワークスというように米国メーカーの製品を選定した。NGNでは、動画など大容量のデータをIPネットワーク上でやり取りするため、極めて高い性能が要求される。日本メーカーはこの性能を満たすことができなかった。

 シスコは富士通と日本市場での展開で提携しており、ハイエンド向けのルーターOS「IOS-XR」を共同で開発している。NTTには、IOS-XRを搭載したシスコの製品を富士通が納入するものとみられる。ジュニパーは日本国内の提携先であるNECと組んで受注したもようだ。コア・ネットワークを支える光伝送装置は富士通が担当する。

 コア・ネットワークとNTT局舎の間をつなぐエッジ・ネットワークの機器は日立製作所グループが受注した。日立6割、NEC4割の出資で設立したアラクサラネットワークスが、エッジ・ルーターの注文を獲得している。

 エッジ・ルーターはNGNを利用するユーザーに対してサービスの制御機能を提供する。例えば、NGNを利用するユーザーのアクセス権限のチェックや、通信帯域を確保するQoS(サービス品質)の設定といった機能を実現する。エッジ・ルーターはユーザー近くのNTT局舎に設置するため、NGNの提供エリアが広がるに従って設置する数が増えていく。

 NTTは当初、トライアルと商用サービスで使う機器の仕様を分けていた。しかし、途中で方針を変更し、商用サービスと同様の仕様でトライアルを提供することにした。このため、今回の調達はトライアルに限定したものだが、2008年初頭にも始まる商用サービスでも各社の製品を引き続き採用する可能性が高い。また、NTTはアプリケーション・サービスを提供するためのプラットフォームの調達について、別途準備の段階に入っているとされている。

 NGNでは、NTT以外の企業が機器を接続しユーザーにサービスを提供できる。NTTはフィールド・トライアルでサービスを試す企業を募っている。

 これにはNEC、NECビッグローブ、NTTコミュニケーションズ、朝日ネット、シスコ、ソニー、ソネットエンタテインメント、ニフティ、日立製作所、ぷららネットワークス、松下電器産業などが参加を決めている。例えば、ソニーはテレビ会議システムの機器を持ち込んで、NGNを介したサービスを実験する。

 これら各社は、(1)サービス会社がサーバーをつなぎ込むSNI(アプリケーションサーバ・網インタフェース)、(2)ユーザーの端末をつなぎ込むUNI(ユーザ・網インタフェース)、(3)通信会社向けのNNI(網間インタフェース)、の3点でNTTのNGNに接続して実験する。NTT自体は、高品質のIP電話やテレビ電話、ハイビジョン相当のIPテレビ放送などに取り組む。

 12月20日に始めるフィールド・トライアルの第1ステップでは、実証実験の様子をNTTのショールームで公開する。2007年1月にも始める第2ステップでは、NTTの関係者を中心に個人向けサービスの実験を小規模に展開する。同年4月からは第3ステップとして、一般公募で1000ユーザー程度に参加してもらう。