三浦 雅孝 アイ・ピー・ビジョン
CTO
三浦 雅孝

SIPインターネット電話サービスを利用するには、端末としてSIP電話機が使いやすい。大抵の機種はWebブラウザを使ってパラメータを設定すれば、SIPサービスに接続可能である。いくつかの機種で実際に接続してみた。ただし、国内では、SIP電話機を入手するのが容易ではないという課題はある。

 日本では、入手可能なSIP電話機(ハードフォン)は非常に少ない。各電話機メーカーはSIP電話機を開発、製造しているものの、一般市場にはほとんど流通していない。というのも、特定ベンダーのIP-PBXに対応させるために、プロトコルを拡張したり修正したりした機種しか用意していないからだ。筆者はある電話機メーカーからSIP電話機を入手しようとしたが、13種類のファームウエアのバージョンがあり、接続するSIPサーバーを決定しないと購入できなかった。また、たとえSIPサーバーを指定したとしても、1台、2台の少ロットでは販売してくれない。

 国内のSIP電話機の大半は、IP-PBXの独自仕様に合わせて開発されてきたため、標準といえないSIPを実装している。どこのメーカーの電話機でも互換性を持ち、そのなかからユーザーは自由に選択できるという標準が本来持つメリットが得られないのが実情である。

台湾ACT社製「P104SLD」

 台湾ACT社製「P104SLD」は日本の販売代理店を経由して購入したSIP電話機である(写真1)。現在、ACTを買収した日本のACTコミュニケーションズが国内向けに販売/サポートをしている。以下は、筆者が台湾ACTの日本の販売代理店からver.2.08.04のファームウエアまで入手し、確認したことにもとづき記載している。現在はACTコミュニケーションズからver.2.12.00が出されている。

写真1●台湾ACT社製SIP電話機「P104SLD」

 筆者は3年以上前から同電話機を愛用している。これまで何度かファームウエアのアップデートが実施されている。筆者が確認した過去の問題には以下のようなものがあった。
(1)SIPセッションのリフレッシュ間隔が正しく設定されなくて、30分ほどの長電話をしていると通話が切れてしまう。
(2)実際には実装されていないMESSAGEコマンドに対して、正常応答してしまう。その結果、あたかもインスタント・メッセージを受信したように相手を誤解させてしまう。

 また、アップデートにより、短縮ダイヤルや複数のSIPサーバーへの接続といった機能が追加された。DiffServによるQoS(Quality of Service)制御も追加されている。しかし、このアップデート版のファームウエアはベンダーにリクエストしないと入手できない。是非、Web上で最新版を公開してほしい。

■変更履歴
台湾ACT社製「VTL-ST02H」としておりましたが、VTL-ST02HはACTを買収したACTコミュニケーションズがプラネックスコミュニケーションズにOEM供給している製品名です。正しくは「P104SLD」です。また、現在、前述のように、ACTコミュニケーションズがACTを買収し、販売/サポートを継続しておりますが、この記事は、ACT製「P104SLD」を購入、実験をした結果にもとづき記載しております。以上、お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2006/12/11 13:30]