テロリスト発見を目的としていた,あらゆる人の情報を含む巨大なデータベース「Total Information Awareness(TIA)」(訳注:この名称は,2003年に「Terrorist Information Awareness」と変更されている)を覚えているだろうか?嫌悪すべき対象であることに気付いた国民が強硬に反対した結果,米国議会は2003年9月にTIAプロジェクト向け予算を否決した。

 これでTIAが葬り去られたと考える者は誰一人おらず,単に非公開プロジェクトになって違う名前で呼ばれることになると予想した。実際,「Tangram」という機密プロジェクトとして生き残っている。

 National Journal紙の記事を引用しよう。

 「政府の最高諜報機関は,テロリストが計画を立てているようにみえる行動パターンを膨大な情報のなかから抽出するため,検索用コンピュータ・システムの構築に取り組んでいる。米国家情報局の運用するこのシステムは,今のところ初期の研究段階にあり,試験を行っている最中だ。一部の試験では,米国の国民と居住者の情報が含まれるであろう政府の機密情報を使う」

 「新しいシステムは,既存のプロファイリング/検出システムの強化版に相当する。政府の持つ機密情報を解析し,テロリストとして疑わしい度合いを得点で示す。さらに個人の通信や金融取引,日々の活動を記録する」

 Tangramに関する情報は,同システムの設計と構築に携わる業者を求める政府文書から明らかになった。

 DefenseTechのWebサイトには,以下の記事があった。「Tangramの記載されていた業者向けの政府文書は,既存の別のプロファイリング/検出システムについても触れている。このシステムは,いわゆる『guilt-by-association models』(連座制モデル)から先には発展しなかった。というのもこのシステムは,テロリストの疑いのある人物を仲間と思われる人物と関係付けるが,その関係がなぜ重要であるか(なぜ仲間であるといえるのか)について,解析担当者に情報をほとんど与えないからだ。Tangramでは,この問題を改善することが求められている。同時に,ある集団全体の疑わしさの度合いをまとめて算出する「collective inferencing(集団性の推量)」といった手法で求められるほかの関係についても有効性を調べる」

 テロリストを対象とするデータ・マイニングは,常に役立たないアイデアだった。Tangramが存在するということは,予算を割り当てないことでTIAプロジェクトの中止を狙った議会に問題があるのだ。Tangramは,TIAが名前を変えて復活したに過ぎない。

http://nationaljournal.com/about/njweekly/stories/...
http://www.fbo.gov/spg/USAF/AFMC/AFRLRRS/...
http://www.defensetech.org/archives/002875.html

データ・マイニングに関する私の過去記事:
http://www.schneier.com/blog/archives/2006/03/...
http://www.schneier.com/blog/archives/2006/05/...

Copyright (c) 2006 by Bruce Schneier.


◆オリジナル記事「Total Information Awareness Is Back」
「CRYPTO-GRAM November 15, 2006」
「CRYPTO-GRAM November 15, 2006」日本語訳ページ
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◆この記事は,Bruce Schneier氏の許可を得て,同氏が執筆および発行するフリーのニュース・レター「CRYPTO-GRAM」の記事を抜粋して日本語化したものです。
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◆Bruce Schneier氏は米Counterpane Internet Securityの創業者およびCTO(最高技術責任者)です。Counterpane Internet Securityはセキュリティ監視の専業ベンダーであり,国内ではインテックと提携し,監視サービス「EINS/MSS+」を提供しています。