Q: 友達から『Linuxを使っていると訴えられる』と言われました。本当ですか。

A: 多分それはないでしょう

 恐らくその友達が言っているのは,「SCO事件」のことではないでしょうか。SCO事件の詳細についてはいろいろ詳しく書かれたものがあるので,それらを見てもらうとよいでしょう。簡単に説明すれば,UNIXのソース・コードを所有するソフトウエア・メーカーの米SCO Group社が,「LinuxはUNIXの著作権を侵害しているから,Linuxを使うにはUNIXのライセンスを取得する必要があり,取得しないで使い続けるのは不法である」ということで,まずはその「首謀者」である米IBM社を訴えたという事件です。

 裁判がいまだに続いていることもあり,さまざまな可能性を考慮すると,現時点で「Linuxはシロ」と言い切ってしまうのは早計かもしれません。もちろんLinuxに直接関係のある人たちは,Linuxはシロだと考えていますが,何しろ裁判,それもアメリカのことなので,どう転ぶかは分かりません。アメリカの裁判では時々ジョークのような結果が出ますから。

 ここでは,万が一(いや億が一,兆が一かも)にでも,SCOが勝訴した場合を考えてみます。そうなったとき,Linuxを使っている人たち,つまり我々を訴えることが可能かといえば,それはなかなか容易なことではありません。訴訟を起こすということは,それ自体コストのかかることですから,「訴訟という商売」という観点からは,ごく末端の弱小エンドユーザーが訴訟の対象となることは考えられません。

 SCOがユーザーを訴えるぞと脅した例も過去にはありました。ただし,そのときに対象となったユーザーは米AutoZone社といった「大手ユーザー」であり,「たんまり賠償金が取れる」ことが見込めるところばかりです。Linuxユーザー個人を対象に訴えることは,まずあり得ないでしょう。ですから,SCO事件に限っていえば,そんなことを心配している暇(ひま)があったら,先日に購入した宝クジが当たったときの心配をしている方がずっと緊急性があるでしょう。

 しかし,「Linuxを無償で使ってリスクはないのか」というテーマは,SCO事件に限りません。Linuxや他のオープンソース・ソフトに何らかの法的リスクが伴うことは,今では無視できません。少なくとも「全く法的リスクはない」と断言できる保障はありません。

 ソフトウエア特許の話は,オープンソースに限らず,ソフトウエア開発者にとってかなり頭の痛い問題ですし,オープンな開発をしていると,著作権的にグレー(あるいはブラック)なコードがまぎれ込むことを完全に遮断することは,極めて困難です。また,ソフトの名称についても,何らかの商標権侵害をしていたり,逆に古くからある有名オープンソース・ソフトの名称が他者に商標登録されていることもあります。既存ソフトの代替となるソフトでは,その画面デザインなどが権利侵害だといわれる危険性は十分にあります。このような「ヤバそうなこと」は無数にあるともいえます。

 とはいえ,それは主にはベンダーが負うべき責任であり,何も知らないで使っているユーザーは法的には「善意の第三者」でしかありません。ですから,使っているソフトに法的リスクがあるといっても,分かって意図的に使っていればアウトですが,知らないで使っている分には訴えることはできません。