岡田 純氏

 激しく変化する今日の業務現場において,ワークスタイル改革のニーズはますます強まっている。

 これまでのワークスタイル変革の主なポイントは,「新しい価値とそれを使いこなすことでの知的価値の創造」,「組織の壁を越えたコミュニケーションの活性化」,「従業員のやる気と働きやすさを最大限に引き出す快適性の実現」である。その結果として,「企業競争力を高め,意思決定をスピードアップしていく」ことを目指す。

 日立製作所では,従来よりユビキタス・ワークスタイル改革について考えてきた。代表的なアプローチは「フリーアドレス」や「ペーパーレス」ということになるだろう。

 まずは,セキュアであること,そして,組織や空間の壁を越えて「ユビキタス&グローバル」を実現することが重要になる。もちろん,そのためには道具が欠かせない。そこで日立が推し進めてきたのが,「クライアント環境の集中管理」,「ブロードバンドの有効活用」,「シン・クライアント・モバイル」だ。

どこでも自分のデスクトップ

 「オフィスのフリーアドレス化」は,新しいワークスタイルの好例である。日立社内でも営業やSEの職場は既にフリーアドレス・スタイルで,フロア・スペースは30%減,顧客対応時間は30%増,見積もりや提案の準備に要する時間は50%減などといった結果が出てきている。

 「ペーパーレス化」については,「セキュリティPC」と呼ばれるシン・クライアントの全面導入と大きく関連している。セキュリティPC開発の基本的な発想は「事故は必ず起こる」というもの。そこで,「情報を持たなければ漏えいはしない」というメインコンセプトに基づき,2004年から開発してきた。セキュリティPCでは,パソコン本体への情報蓄積は一切,行われない。各種外部メモリーの接続も制御され,紙への出力も不可となっている。

 こうした環境を実現するうえでカギとなるのは認証基盤である。セキュリティPCでは,認証のための電子証明書と接続のためのプロファイル情報が入った「KeyMobile」という携帯デバイスを使う。このKeyMobileと自身のパスワードさえあれば,好きな場所で,空いている共用のセキュリティPCに自分のデスクトップ環境を呼び出して使える。

今年度中に総計7万ユーザーに

 日立では,自席のパソコンとの接続のための「ポイント・ポイント型」,情報センターにあるクライアント・ブレードに接続して既存の個人環境を実現する「ポイント・ブレード型」,米シトリックス・システムズの「Presentation Server」を利用して主に定型業務を行う「センタ型」という三つの基本モデルを用意している。既に,情報通信グループを中心に1万5000人以上がセキュリティPC環境に移行済み。今年度中には総計ユーザー7万人を目指している。

 企業内フリーアドレスという発想を基盤にして,いつでもどこでも,オフィスと同じ環境で仕事ができるセキュアなユビキタス・ソリューション。これをより一層,推し進めていきたいと考えている。