野村 雅行氏

 NTTグループは8月1日,中期経営戦略の一環として営業体制を整理した。グループの中で今後は,法人向け事業をNTTコミュニケーションズ(NTTコム)が強化していく。

 上位レイヤー事業については,インターネット接続サービスの「OCN」がNTTコミュニケーションズに既に存在した。ここに,ポータル事業を手がけてきたNTTレゾナント,映像配信やインターネット接続事業を展開してきたぷららネットワークスを子会社化し,統一的かつ戦略的にサービス提供していく。

 上位レイヤー事業は法人事業と連携させる。具体的にはポータル事業を中心として一般消費者とのコンタクトを進め,そこでの経験を「BtoBtoC」という形で企業ユーザーに提供していきたい。こうした形は,今後のNTTコムの重要なビジネスモデルとなる()。

図●一般消費者と法人顧客をつなぐNTTコミュニケーションズのビジネスモデル
図●一般消費者と法人顧客をつなぐNTTコミュニケーションズのビジネスモデル
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双方向型の情報発信で消費者が変化

 世の中はディジタル革命が進み,データの処理や蓄積,再利用,小型化などが容易になった。これがインターネットと結び付き,ネットであらゆる情報を利用できるようになる。今は,ディジタル革命からICT(information and communication technology)革命へ,という段階だ。

 インターネットや携帯電話は,今やほとんど誰でも使っているインフラである。その中で,伸びが著しいのはブロードバンドだ。それに合わせて,最近大きく変わってきたのは使い方。今まではインターネットを通じて,「情報を検索する」,「ホームページを見る」など,一方向の情報利用に過ぎなかった。しかし,現在はブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などが出てきて,コミュニケーションが双方向になっている。それを容易にしているのがブロードバンドなのだ。

 そうなると,消費者や利用者の動向も変化する。今までは商品を消費者に売る場合,テレビのコマーシャルなどで認知度を上げて販売してきた。消費者を年齢や性別でカテゴライズするマーケティング手法だ。しかしこれは崩壊していく。

 これからは,消費者や利用者が自分と同じ趣味や価値観などを持った人同士でコミュニケーションをして価値を共有。その中で,さまざまな選択をしていくようになる。ブログやSNSを「語らいの場」として利用し,共通の価値観を持った人がコミュニケーションして情報交換をする。インターネットが日本全国,グローバルに語らいの場を広げたのだ。

 例えば買い物でも,Webで新しい情報や口コミ情報を得て,一番いいものを買うことができるようになっている。音楽や動画のダウンロードは,ブロードバンドがあって初めて成り立つサービスだ。仕事もテレワークや在宅勤務が増えるなど,個人のライフスタイルが広がりを見せている。利用した人の感覚がそのままブログやSNSなどに出てくるので,いろいろな判断をするうえで極めて参考になる。こうした現象がもう日常的に,消費者の間で起こっている。「ロングテール」というように,商品の売れ方も少し変わってきた。

マーケティングもWeb 2.0で転換

 そのため今後,企業に求められるのはWebを使ったマーケティングやブログ,Web 2.0の流れを使って,個人顧客と企業がよく“会話”することだ。つまりマーケティング手法の転換が必要になる。24時間365日,インターネットで商品やサービスを販売し,かつカスタマー・サービスやコール・センターでは,メールでもWebでも相談を受け付けられるといった体制を,競合他社との差異化のためにアピールする必要がある。

 製品を作る拠点もいまや日本だけではなく海外に広がっている。ノンストップでグローバルにオペレーションできるというバックヤードの業務も重要になってくるし,それを支える人材の活用も重要だ。

 NTTコムは企業ユーザーに向け,Webを中心とした攻めの経営の支援や,24時間365日動くシステムのオペレーションをサポートしていこうと考えている。さらに,企業ユーザーとその顧客との関係をいかに向上させていくか。これが差異化のポイントになるので,顧客サービスの強化のためのコール・センター構築なども支援したい。グローバルな企業であると,それを支えるオペレーションもグローバルでノンストップのICTサポートが必要になる。BCP(business continuity plan)というキーワードも重要だ。コンピュータ・システムやネットワークが止まると売上高の減少につながる。

「フレッツ」に監視などのオプション

 回線やネットワーク・サービスについては,信頼性と経済性を両立させる新サービスを追加していく。具体的には,NTTコムの広域イーサネットやIP-VPN(仮想閉域網),OCNのアクセス回線に,NTT東西地域会社のサービスを使う新しいメニューを8月に開始した。NTTコムがワンストップでサービス提供し,オペレーション品質などを強化。納期や故障通知,帯域管理なども徹底している点が特徴だ。

 今秋には,「フレッツ・マネージド・サービス」を追加。東西NTTのフレッツ網をアクセス回線に使う「Group-VPN」のユーザーが増えているが,フレッツ網部分に追加機能が欲しいというユーザーの声が多い。故障通知や監視,工事のときのバックアップ回線をセットにするなどの機能をオプションで追加できるサービスを計画している。

 今後はNTTコムが企業ユーザーのパートナーになりたい。我々の力がどれだけあるか試されるかもしれないが,個人顧客と企業のコミュニケーションを充実させ,テクノロジー面でも十分な要件を満たしていく。