オブジェクト指向の考え方を適用する最大のメリットは概念操作という高水準での記述を可能にする点にあります。概念を抽出するということはシステムや業務に対する考え方も規定します。いかにシステムを認識すればよいか。コトバへの着目が重要です。

 また,オブジェクトの識別とその関係整理は,オブジェクト指向に基づくシステム開発の第一歩であり,最も難しいステップです。現場のエキスパートが使う言葉に着目して候補を切り出し,適切かどうかを検証します。修飾語の関係や適用する比喩などから日常的で曖昧な認識の枠組みを整合的な体系へ変換し整理しなければなりません。

羽生田栄一の「オブジェクト論」【前編】(上)
羽生田栄一の「オブジェクト論」【前編】(中)
羽生田栄一の「オブジェクト論」【前編】(下)
羽生田栄一の「オブジェクト論」【後編】(上)
羽生田栄一の「オブジェクト論」【後編】(中)
羽生田栄一の「オブジェクト論」【後編】(下)

羽生田 栄一(Hanyuda Eiiti) 豆蔵 取締役会長
富士ゼロックス情報システム時代にSmalltalk-80システムに触れ,オブジェクト指向に開眼。以降オブジェクト指向技術の普及に努める。オージス総研を経て2001年にオブジェクト指向技術専業ベンダーである豆蔵の代表取締役社長に就任。2003年より現職。オブジェクト指向技術関連の訳書多数。技術士[情報工学部門]。