米マイクロソフトのCSA(Chief Software Architect)であるレイ・オジー氏は,ロータス ノーツの開発者であり,米国有数のソフトウエア・アーキテクトとして知られている。ロータスを離れた同氏は,グルーブ・ネットワークスを設立,「バーチャル(仮想)オフィス」というコンセプトのコラボレーション・テクノロジー「Groove」を開発した。離れた拠点に点在する社員や関係者をネットワークで結び,あたかも同じ拠点にいるかのように仕事ができるというものだ。この技術はそっくり,「Office Groove 2007」という製品になって,マイクロソフトのOffice Systemに組み込まれた。仮想オフィスはどのようなインパクトをもたらすのだろうか。オジー氏が語った。(ITpro)


 現在のビジネス環境や経済環境により,企業は数多くの才能ある人材を解雇している。私たちの業界ではこれらの有能な人材がバーチャルな組織を形成し始めている。私の見る限り,これは決して小さな現象ではない。
 
 地理的に離れている人々がホームオフィスなどで小規模のビジネスを開始し,インターネットを通じてお互いにコミュニケーションを図りながら仕事を進めている。皮肉にも,数多くの人が以前に所属していた企業とオンラインで仕事をしている。

 これらのユーザーによって,Grooveは末端から大企業の中央へと戻されていく。ビジネスの構造は編み目のようなメッシュ構造になり,Grooveが持つ編み目のようなテクノロジーがサポートすることになった。

 私がコラボレーション・テクノロジー「Groove」を開発し,提供することにしたのは,Grooveが掲げる数多くのコンセプトこそ,これからの世界が向かっていく方向性であると信じ,未来を形作る可能性を持っているからだ。

Grooveは「体の一部」になる

 「私たちの体の一部となっているテクノロジー」と聞いて,私の頭にすぐ思い浮かぶのは検索エンジンのグーグルである。先日もグーグルがどれほど私たちの体の一部になっているかという話を妻とした。妻が幼馴染みの友人たちを自宅に招いたとき,友人の一人が「今,○○さんはどうしているのでしょう」と言った。
 
 数分後,私はラップトップパソコンの画面を見せながら「この人じゃないですか?」と尋ねた。彼女はそれを見て「恐いぐらい驚いたわ」と言っていた。このようにグーグルは多くの人にとって体の一部と化している。電子メールも同じだろう。そして,すでにGrooveの世界にいる私たちにとって,Grooveのコンセプトもまた体の一部と化している。

 核となるコンセプトは「バーチャルなワークスペース」といい,私たちが一緒に仕事をする場所を素早く作る方法を提供することにある。これは,電子メールの「新規メッセージを作る」と同じくらい簡単なことだ。私がマーケティングディレクターと話している時に,私たちとその他の担当者がフォローアップしなければならない活動項目が発生した場合でも,パソコン上にワークスペースを作り,数回クリックするだけで適切な人材をプロセスに関与させることができる。

 私たちは必要な期間だけこのワークスペースを利用し,必要がなくなれば消去する。Grooveのテクノロジーはまだ広く普及していないが,可能性は非常に高いと信じているし,そうなるように努力している。
 
 Grooveが注目される理由は,私たちのメッセージが浸透していると共に,仕事の在り方が変化しているからである。自宅から,オフィスから,移動中にも仕事をする。週末,どこにいても仕事ができる。人々にとって,物事を成し遂げるためにはこのような環境が合っている。「オフィスに行ってコンピュータの前に座る。会社のアプリケーションの枠内で仕事をし,帰宅する」というタイプのユーザーはどんどん減ってきている。

 今日,ほとんどの企業が 社内のウェブポータルを利用しているが,従業員がポータルにアクセスしづらかったり,組織の外やオフライン環境から必要な情報へアクセスできない企業も数多く存在する。小規模な外部コンサルタント会社とやり取りをする場合であれば,ポータルへのアクセスそのものができない。チームのワークスペースへアクセスすることも,必要な情報を利用することも不可能である。このような環境に直面している企業がGrooveに目を向け,ダウンロードして利用して下さっている。