文字コードの発展経緯から役割と仕組みを学ぶ始まりは1874年のボード符号にあり歴史的に見て,文字コードが初めて登場したのは電気通信が発明された18世紀末のこと。当初の電気通信は,まだ声をそのまま送れなかったので,文字を電気で送れる電流のオン/オフのパターンに直してやらなければならなかった。文章を送る時に,その文章を構成する文字を信号に変えて通信用の線に送りこみ,その信号を受け取った側で元の文字に戻してやる。このとき,送信側と受信側の双方で,文字と信号のパターンの対応関係をあらかじめ文字コードとして決めておく。 電気通信が盛んになった19世紀には,数多くの文字コードが考案された。このうち現在まで生き残っているのが,有名なモールス符号である。 モールス符号は,“ツー”という長いオン信号と“トン”という短いオン信号を組み合わせて文字を表し,長いオフの信号で文字と文字の間を表す。こうしたしくみなので,1文字を表す信号の長さがバラバラになる。モールス符号は人が直接送ることを想定していた。信号の長さがバラバラであったため,通信を高速化するには限界があった。 そこで,モールス符号とは別の符号を通信に使う研究も数多くなされた。フランス人の電信技師のエミール・ボード氏もそうした研究を進めた一人である。 ボード氏が1874年に考案したのは,五つのキーがあるピアノ型鍵盤の送信装置と紙テープに文字を印字する受信装置である。送信装置で押された五つのキーの組み合わせが電気信号として受信側に送られ,受信側ではその組み合わせパターンに対応した文字コードをプリンタで打ち出すというしくみである。キー1個のオン/オフの状態を0か1のビット信号と考えれば,ボード氏の装置では,5ビットの文字コードが使われていたことになる。オンの信号の長短で文字を示すモールス符号はビット列には直せなかったので,ボード符号こそビット列に直せる初めての実用的な文字コードと言える(図3)。ボード符号は,電信用の文字コードの標準仕様であるITA1の基になった。
しかし,5ビットでは32種類の文字しか扱えない。そのままでは,アルファベットの大文字と数字を合わせた36字には足りない。そこでボード符号では,文字コード表を2枚用意し,表を切り替えて使うという工夫をした。 「FIGURE SPACE」と「LETTER SPACE」という特別な1文字分の空白用コードを用意し,FIGURE SPACEでアルファベット用コード表から数字や記号用のコード表に,LETTER SPACEで逆に数字用から文字用に切り替えると決めた(図4)。この工夫により,5ビットにもかかわらず,ボード符号では56種類の文字を扱うことができた。
出典:日経ネットワーク 2002年2月号
90ページより
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