11月20日,都内のホテルでTech-One!セミナー「ワイヤレス・シンポジウム2006」(主催:日経エレクトロニクス)が開催された。今回の技術セミナーの主題は「モバイル・ブロードバンド」。これを実現する技術として,「モバイルWiMAX」や次世代移動体通信システムとして期待が集まる「Super3G」「ウルトラ3G」などについて講演があった。講演のトピックを紹介する。

モバイルWiMAXを「ウルトラ3G」に統合,8月の実験で技術検証---KDDI

 KDDI ワイヤレスブロードバンド開発室長の要海敏和氏は,「モバイルWiMAXの検討と実証実験最新状況」について講演した。

 KDDIが2005年6月に発表した「ウルトラ3G」は,現行の第3世代(3G)携帯電話,無線LANに加え,モバイルWiMAXなどの新たな無線システムやADSL,FTTHなどの有線アクセスも包括して,シームレスな統合サービスを提供するアクセス非依存のIP統合ネットワークである。


写真1 KDDIの「ウルトラ3G」構想
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 モバイルWiMAXは,ウルトラ3G構想の一つのポイントとなる技術。同氏はウルトラ3Gを「IPv6ネットワークのパケットベース・コアネットワークを基盤として,無線・固定の双方を含む多様なアクセス環境を相互連携させ,統合したサービスをMMD(MultiMedia Domain*1)準拠のアプリケーション・システムとシームレスに接続させてサービスを提供するプラットフォーム」と説明。そして「3Gネットワークを発展させるもの」であると位置付けた(写真1)。ウルトラ3Gのサービス・インフラとなるネットワークは,EV-DO,FTTHやモバイルWiMAX,次世代CDNなどの色々な方式を追加可能なプラットフォームとし,さらに「MMD/IMS(IP Multicast Subsystem)/NGN」上にSIPベースの呼制御を持たせることで,IPテレビ電話やオンラインゲームなどの色々なアプリケーションサービスをプラグインできるプラットフォームであると説明した。


写真2 モバイルWiMAXの機能評価
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 KDDIでは,モバイルWiMAXを「ウルトラ3G」のアクセスシステムの一つと位置づけ,システムの接続実験を実施している。モバイルWiMAXの検証は2003年に開始し,2006年8月には10MHz帯域システムの検証をおおむね完了した。現在Advanced技術の検証試験を中心に実施している。この実証実験の成果として,基本評価により市街地環境での実用性能(実効通信速度と基地局間の高速ハンドオーバー)の確認とAdvanced技術評価により性能改善(MIMO評価など)の確認ができたと説明した(写真2)。

 最後にKDDIの今後の取組として,広帯域での大容量データ通信サービスを安価に提供するために,世界共通規格となるモバイルWiMAXシステム導入に向けて検討を進める。さらに,移動体網のオールIP化を進め,MMD/IMSによりNGNとして移動固定のサービス統合によりいっそうの利便性向上を目指すとした。