日経マーケット・アクセスの月次調査「日経マーケット・アクセスINDEX(日経MA-INDEX):企業情報システム」の2006年10月版では,主要システム・インテグレーター(SIer)の企業について,ITビジネス(サービス)分野のどんな領域を手がけていると思われているのか(認知度)と,その企業を「今後利用したい」(利用意欲)と感じているかを聞いた。

 利用意欲では,513件の全回答者を100%として集計すると,最大手のNTTデータがトップ(7.2%)で,富士通サポート&サービス(FSAS)と富士通ビジネスシステム(FJB)が同率2位(6.8%)だ。

 ただし,どのSIerについても,7割~8割の回答者が「今後利用したい」「強い存在感がある」「会社に勢いがある」のいずれも支持せず,空欄(無回答)にしている。当該SIerを“視野に入れていない”と解釈できるこれらの“無回答”者を除外すると,利用意欲を喚起している大手SIerの実質的なトップ3はFJB(32.4%),NECフィールディング(30.9%),FSAS(28.9%)。NTTデータは結局“しきいが高い”のか,実質では20.2%と低い評価になる。

 本図に示したように,全回答者513件を100%とした利用意欲は,そのSIerの事業領域として認知されている分野の広さ(回答者が「手がけていると思う」分野の数の平均値)との間に,中程度の正の相関関係(相関係数0.57)がある。この「事業領域の広さ」では,NTTデータ(6.6)をしのいで,NECソフトがトップ(7.6)。NECソフトはアプリケーション系8分野とインフラ系7分野すべてで,有効回答者(当該SIerについて,1つ以上の分野を「手がけている」と認知した回答者)の40%以上が「手がけている」と評価した。今回調査で対象とした81社のSIer中,全分野で認知度10位以内に入ったのはNECソフトだけだった。

 このNECソフトも“無回答”者を除いた実質的な利用意欲では23.4%と,あまり高くない。図示していないが,「自分の職務領域はこの会社と接点がある/ない」の回答で分けた場合に,NECソフトは「接点がある」回答者の利用意欲29.7%に対して,「接点がない」回答者は13.8%と低い。

 NECソフトは,どんなITビジネス分野を手がけているか認知している回答者からは,「どの分野でも手がけている“オールラウンダー”」と見なされ,「接点がある」回答者の利用意欲は高い。言い換えると“内向き(ユーザー・コミュニティ)の評価は高い”と解釈できる。次の「日経MA-INDEX:企業情報システム」2006年11月版調査では,同じベンダー/SIerを対象に料金,サポート,管理能力など多様な切り口からの満足度を調査しているので,その結果と合わせて,来月改めて分析したい。

◆注
 調査実施時期は10月上旬~中旬,調査全体の有効回答は2283件,うち情報システム担当者の有効回答は513件。図の縦軸には,513件の中で「今後利用したいと感じる」との回答の比率を示した。
 「事業領域の認知度」(図の横軸)は,アプリケーション系8分野(経営戦略・意思決定支援系,会計系,人事・給与系,SCM系,SFA・営業系,CRM・顧客関連系,生産管理系,物流系)と,インフラ系7分野(セキュリティー系,グループウエア/情報共有系,WAN/LAN/電話系,インターネット系(情報発信/電子商取引/マーケティング),ストレージ系,アプリケーション/システム間連携基盤系,運用/危機対策/ビジネス・コンティニュイティ系)の合計15分野を提示。取引や商談経験の有無に関係なく,回答者が知る範囲で,各SIerがその分野のITビジネス(サービス)を手がけていると思うかを聞いた。
 図の横軸には,15分野の中で回答者が「手がけていると思う」とした分野の数の平均値を示している。15分野とも空欄とした無回答者は,当該SIerを“知らない”ないし“視野に入れていない”と解釈して,回答数(平均の母数)から除外した。
 大手SIerの中からメーカー系/独立系や専門分野などのバランスを考えて,本図の16社をピックアップし,有効回答者全員に評価を求めた。リコー,富士ゼロックスなどその他の大手SIer 65社については,SIerと回答者をそれぞれ5グループに分けて,各回答者に13社だけを提示し評価を求めた。
 NECソフトについては,九州,中部など各地のグループ会社を含めて評価するよう求めた。

図●主要システム・インテグレータ16社に対する「手がけているビジネス領域の認知」と「利用希望」の分布