SOHOや自宅で,Red Hat Enterprise Linux(RHEL)を導入したサーバーを2台使う。ぜいたくな使い方だが,これに近いことは簡単に実現できる。RHELのクローンOSで無償で入手できる「CentOS」と仮想化技術「Xen」を組み合わせる手法だ。今回は,Xenの導入を前提にしたCentOSのインストールのポイントを説明する。

 Xenを用いて1台のマシンに2つのCentOSを稼働させ,それぞれのカーネル上でWebサーバーとファイル共有サーバーを動作させよう。さまざまな設定を間違えずにゲストOSを動作できれば,サーバー環境の構築手順は一般のLinuxと同様だ。

 Xenによるサーバー統合作業を始める前に,いくつか仕様を決めておこう。図1が,XenとCentOSを用いて1台のマシン上に2台のサーバーを構築したブロック図である。オレンジ色で示した個所が,Xenに関連する部分だ。そのほかのほとんどの部分は,CentOSに含まれるアプリケーションだけで構築できる。

図1●統合したサーバーのブロック図
図1●統合したサーバーのブロック図

 サーバー用以外に図1の左側に示した「Domain-0」と呼ぶ制御用のゲストOSも必要になる。このゲストOS上では,Xenを制御するためのアプリケーションを動作させる。そして,右側の2つがサーバー用に用意したゲストOS(それぞれ「Xen-inet」と「Xen-lan」と呼ぶ)である。本連載では,それぞれをWebサーバーとファイル共有サーバーとして動作させる。ゲストOSは,メイン・メモリーとハード・ディスク容量が許す限りいくつでも起動できる。

 この環境を実現するためにそれぞれのゲストOSで利用するメイン・メモリーとハード・ディスクの容量を決定しよう。プロローグで示した統合前のサーバー環境を考慮し,メイン・メモリーとハード・ディスクの容量をそれぞれ図2図3のように割り当てた。メイン・メモリーはすべて割り当てずに,一部を未使用領域として残した。サーバーの運用状況を考えながら,未使用領域をメモリー資源が足りないサーバーに割り当ててもよいだろう。

図2●メイン・メモリーの割り当て
図2●メイン・メモリーの割り当て
1Gバイトの物理メモリーを各ゲストOSに割り当てる。

図3●ハード・ディスクの割り当て
図3●ハード・ディスクの割り当て
160Gバイトの容量を各ゲストOSに割り当てる。

 メイン・メモリーとハード・ディスクの割り当てが決まれば,実作業に入れる。サーバーを統合する手順は次の通りである。

(1)CentOSのインストール
(2)Xen関連ソフトの作成
(3)Domain-0の起動
(4)サーバー用ゲストの構築・起動
(5)各サーバー環境を構築

(1)CentOSのインストール

 Xenを導入する前に,まずCentOSをインストールする必要がある。ここで導入するCentOSは,Xenに関連するソフトのコンパイルや,Domain-0のルート・ファイル・システム,Xenを起動するためのブート・ローダーなどさまざまな用途に用いる。

 ただし,インストールに必要なソフトはそれほど多くはない。そこで,CentOS付属のインストーラで必要最低限のソフトを導入していく。足りないソフトは後から追加する。

 CentOSは,記事執筆時の最新版バージョン4.1を用いる。「インストール・ガイド」に記されている手順に従って,CentOSを導入していこう。

 ただし,「4 インストールの種類」では「カスタム(C)」を選び,「5 ディスクパーティションの設定」では「Disk Druidを使用して手動パーティション設定(D)」を選択する。「ディスクの設定」画面が表示されるので,必要なパーティションを作成する。

 この段階で必要なパーティションは図3の上から3つまで。カーネルを格納するパーティションとDomain-0のルート・ファイル・システム,Domain-0のスワップ領域だ。Xen-inetなどのパーティションは,Xen導入後に設定する。〔新規(W)〕ボタンをクリックし,表1に示した設定内容で各パーティションを順々に作成しよう*1写真1)。

表1●CentOSインストール時に作成するパーティション
表1●CentOSインストール時に作成するパーティション
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写真1●3つのパーティションを作成する
写真1●3つのパーティションを作成する
カーネルを格納するパーティション(/boot)とDomain-0のルート・ファイル・システム(/),Domain-0のスワップ領域を作成する。
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 「9 ファイアウオールの設定」では「ファイアウォールなし(O)」を選び,「SELinuxを有効にしますか?(S)」では「無効」を選択する。インストール完全ガイドには登場しない「パッケージグループの選択」画面で,いったんチェックをすべて外してから「開発ツール」のみをチェックする(写真2)。

写真2●パッケージグループの選択
写真2●パッケージグループの選択
「開発ツール」のみをチェックする。
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 開発ツールのみをチェックしたために,インストール完全ガイドの「14 インストールの完了とCentOSのブート」が終了した際,「15 インストール後の設定とライセンスの同意書」には進まない。「login:」というコマンドラインのログイン・プロンプトが表示されてインストールが終了する。

 インストール時に設定したrootのパスワードを用いてrootユーザーでログインし,すべてのパッケージをyumコマンドでアップデートする。