SOHOや自宅で,Red Hat Enterprise Linux(RHEL)を導入したサーバーを2台使う。ぜいたくな使い方だが,これに近いことは簡単に実現できる。RHELのクローンOSで無償で入手できる「CentOS」と仮想化技術「Xen」を組み合わせる手法だ。

 複数のサーバーを1台に統合したい――。SOHOや自宅で複数のサーバー・マシンを日々運用しているだれもが考えることだろう。統合すれば電気代や場所代などのコストは安くなる。

 最近,サーバーを統合する手段として,仮想化技術が注目されている。仮想化技術とは,1台のマシン上で複数OS(「ゲストOS」と呼ぶ)を同時稼働させるための技術である。個々のゲストOSは独立しているため,複数のマシンが動作しているように扱える。セキュリティの設定や運用管理も独立して行えるため,統合しても今まで通りの管理が可能だ。さらにアプリケーションも,従来の環境をほぼそのまま移行できる。

 これまで仮想化技術は大型汎用機(メインフレーム)や大型のUNIXサーバー機,あるいは有償ソフトにより実現されていた。しかし「Xen」というフリーソフトが登場したことで,本格的な仮想化技術がただで利用可能になった。

 サーバー用途に使うLinuxディストリビューションの一つとしてお薦めなのが,「CentOS」である。CentOSは,企業の基幹システムにも利用されている有償Linuxディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux」のソース・コードを基にして開発された無償再配布可能な“Red Hatクローン”。Fedora Coreのような先進的な機能を多数盛り込んだLinuxディストリビューションをサーバーOSに用いるよりも安心である。

制御用OSの分メモリーは多めに

 では早速,Xenによるサーバー統合を実施してみよう。具体例を用いて説明した方が分かりやすいので,本特集では 図1のようなサーバー統合を想定した。家庭内に設置したWebサーバーとファイル共有サーバーの2台を,1台のサーバーに統合するという事例だ。

図1●Webサーバーとファイル共有サーバーを統合する
図1●Webサーバーとファイル共有サーバーを統合する
Xenを用いて1台にサーバーを統合。1台のマシンで2台のサーバーを運用する。
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 Webサーバーは512Mバイトのメイン・メモリー,約40Gバイトのハード・ディスクを搭載している。Webサーバー・ソフトには,Apache HTTP Server(以下,Apache)を利用している。一方,ファイル共有サーバーは,Sambaを利用。そのメイン・メモリーは256Mバイト,ハード・ディスク容量は約80Gバイトである。

 Xenを使う場合,メイン・メモリーとハード・ディスクの容量は,これらのサーバー分に加え,Xenの制御用ゲストOSに必要な分を用意する。また,CPUはシェアされるため,ある程度性能が高いものを選択すべきだ。

 以上の条件から次のハードウエアを用いてサーバーを統合した。2.8GHz動作のCeleron Dプロセッサ 335と1Gバイトのメイン・メモリー,160Gバイトのハード・ディスクを搭載したPCだ。合計で6万円以下で自作できる。家庭内であるため,RAIDのような信頼性は優先しなかった。それよりも省スペースを重視してキューブ型PCを選択した。