筆者は,家族と親しい友人用に自分でExchange Serverを運用している。業務でExchangeを運用している人と比べると,技術的な実験をやりやすい立場にあると言える。そこで週週間前,筆者は自宅のサーバーをExchange Server 2007に移行した。

 もちろん,使ったのはベータ版である。実運用環境でベータ版のExchange Server 2007を使うことを,Microsoftが推奨もサポートもしていないことを十分に承知していたので,新しいサーバーをホストする新しいフォレストとドメインを構築する前に,筆者はExchangeのデータベースをバックアップして,古いドメインに戻らなければならない状況に備えた。

 筆者がこの2週間で学んだことはたくさんある。

 まず,設定はおおむね簡単だった。これまでExchange Server 2007をいくつもの仮想マシンにインストールしてきたので,コマンド・ラインとGUIインストーラについては熟知していた。ただし,「ユニファイド・メッセージング・サーバー・ロール」(Exchange Server 2007をユニファイド・メッセージング・サーバー機能)をx64マシンにインストールするのに必要となる様々な追加プログラムを探し出すのには,少々骨が折れた。

 欠けているコンポーネントへのライブ・リンクが設定ウインドウに表示されるのはありがたいが,欠けているコンポーネントを設定ユーティリティが検知して,インストール・メディアから取得し,必要に応じてユーザーに対してインストールするかどうかを尋ねるようにしたほうが使いやすい。

 インストールが完了したら,インターネットで電子メールをやり取りするように設定するのは簡単だ。Microsoftがこの後のビルドで変更するかどうかは分からないが,Exchange Server 2007 ベータ2に関して言えば,次のような追加の作業が必要だった。

・インターネット電子メールを受信するには,デフォルトの受信リスト・コネクタへの匿名トラフィックを許可する必要がある。

・Exchange Server 2007の機能の1つである「Edge Transportサーバー」を使っていない場合,Exchangeアンチスパム・エージェントを手動でインストールする必要がある。インストールには「C:\Program Files\Microsoft\Exchange Server\Scripts」フォルダにある「Install-AntiSpamAgents」というスクリプトが必要だ。「Install-AntiSpamAgents」はWindowsのPowerShellコマンドレット(cmdlet)ではなく,Exchange Management Shellで実行するスクリプトだ。

 インターネットで電子メールをやり取りできるようになったことを確認した後,ユーザーのメールボックスにあるデータを新しいサーバーに移行した。その前に「Microsoft Exchange Server Mailbox Merge」(ExMerge)ウィザードでデータをエクスポートしていたが,古いActive Directory名とDNS名で新しいフォレストを作成していたため,この手順が必要だった。違う名前のフォレストを使っていれば,フォレスト間の信頼関係を設定して,Exchange Server 2007の機能を使って,Exchange間でメールボックスを移行できただろう。

SSL証明書の発行でトラブル

 Exchange Server 2007は自動的にSSL(Secure Sockets Layer)証明書を作成する(関連記事:ExchangeでSSL証明書が使いやすくなってきた)。よって,Microsoft Outlook Web Access 2007を即座に利用できる。

 しかし,筆者のサーバーでは携帯デバイスからExchangeメールボックスにアクセスできる「Exchange Activesync」を使っているユーザーもいたため,このプロトコルで使える証明書を発行する必要があった。Windows Certificate Authorities(CA)を設定し,「ExchangeCertificat」というcmdletを使って証明書の要求を生成した。CAから証明書を取得した後,「Enable-ExchangeCertificate」というcmdletを使ってこれを有効化した。

 新しい証明書のインストールは順調に進んだように見えたが,どの携帯デバイスもこれを受け付けないという問題が発生した。最初,CAルート証明書を機器にインストールする必要があるのかと思ったが,やはりだめだった。トラブルシューティングとイライラにしばらく時間を費やすと,Enable-ExchangeCertificateが証明書をサービスに結びつける要求を無視することがある,という迷惑なバグを発見した。

 結局,Exchange ActiveSyncはデフォルトで自己署名証明書を使っていたようだ。そして,筆者の携帯デバイスはその証明書がお気に召さないらしい。この問題は,Enable-ExchangeCertificateをもう一度実行すると解決した。このバグは「Post-Beta 2」のビルドで修正されている。

 また,コラム用の電子メール・アドレスで使用する共有フォルダを設定する必要があったが,「New-PublicFolder」というcmdletを使えば簡単だった。既存のExchange Server 2003がある典型的な環境では,OutlookやExchange System Managerも使えるはずだ。

 スパム対策機能に関しても対応する必要がある。古いサーバーでは,米Vamsoft製の「ORF Enterprise Edition」というスパム・メール対策ソフトを使っていて,このソフトはよい働きをしてくれていた。Exchange Server 2007のスパム・フィルタはRBL(Realtime Blackhole List)を使わない。使えるが,デフォルトには含まれていない。いつかコラムで,筆者が使ったRBLとその動作について説明したい。