前回に引き続き今回も,10月20日から3日間,東京国際フォーラムで開催された2006東京インターナショナルオーディオショーで展示された機器について紹介する。

ユキム

 ユキムは,オーラデザインジャパン(アンプ),ドイツのELAC(スピーカ),カナダのOracle Audio Technologies(ターン・テーブル,CDプレーヤ,DAC),スイスのORPHEUS(DAC,アンプ),スイスのBenz Micro(カートリッジ),米国のBirdland Audio(DAC)などを輸入している。今回のショーでの注目の新製品は,オーラデザインジャパンのAura note(CD/FM/AM内蔵アンプ),ELACのBS203 ANNIVERSARYスピーカである。

 Aura noteは,イギリスのAuraで1997年にデザインされたまま製品化には至らず,Auraも活動を停止したため,埋もれたままになっていたものを製品化したものである。お洒落で,幅27.5cm,高さ8.5cmのコンパクトなボディーにCD,FM/AMラジオ,アンプを収めた製品で,iPod Shuffleなどの携帯音楽プレーヤ(MP3,WMA,Ogg)を挿せるUSB端子と,パソコンのオーディオ・デバイスとして動作するUSB端子も装備する。携帯音楽プレーヤはAura noteのリモコンで操作できる。USBメモリーに,すべての入力(AUX/FM,AM/CD)からMP3(128kbps)で録音可能である。パソコンのオーディオ・デバイスとしては24ビット,96kHzに対応している。

 アンプ部は,Auraの傑作インテグレーテッド・アンプVA-50の設計を踏襲しており,現在のオーディオにはない,瑞々しい鮮度溢れるあのオーラ・サウンドを現在に蘇らせてくれる。

 アンプ部の出力:50W+50W(8Ω)。パワー・トランジスタには日立製J162/K1058 MOS-FETを使用。入力は,AUX(RCA)×1,USB×1(USBメモリーと携帯音楽プレーヤ用),mini USB×1(PC用)。ヘッドフォン出力×1。ボリュームはCIRRUS LOGIC CS3310。周波数特性は20Hz~25kHz(-0.5dB)。CD部のDACは,CIRRUS LOGIC CS4398。

 寸法は,幅278mm×高さ84mm×奥行き278mm。重量は7kg。価格は28万3500円。2006年12月発売予定。


図1●Aura note。iPod Shuffleが挿してある

 ELACは,アルミと紙のハイブリッド振動板を搭載したウーファと,50kHzまで伸びたトゥイータを小型のキャビネットに収めたスピーカが注目を集めている。

 ELAC BS 203 ANNIVERSARYは,2ウェイ,2ユニットの小型バスレフ・スピーカである。BS 203.2のネットワークを改良し,クロス・フレームを採用した。ウーファは15cm。トゥイータはJET III。能率は86dB。インピーダンスは4Ω。周波数特性は42Hz~50kHz。最大入力は80W。寸法は,幅170mm×高さ285mm×奥行き232mm。重量は5kg。仕上げはグロス・ブラック。価格は,2台で15万7500円。2006年9月発売。専用スタンドは2台で5万2500円。


図2●ELAC BS 203 ANNIVERSARY


図3●AURA noteとELAC BS 203 ANNIVERSARYとの組み合わせはなかなか見栄えが良い

 ELAC FS 210 ANNIVERSARYは,3ウェイ,3ユニットのトールボーイ型バスレフ・スピーカである。クロス・フレームを装備している。ウーファとスコーカは18cm,トゥイータはX-JET。能率は89dB。インピーダンスは4Ω。周波数特性は28Hz~50kHz。最大入力は250W。寸法は,幅286mm×高さ1114mm×奥行き348mm。重量は31kg。


図4●ELAC FS 210 ANNIVERSARY

ステラヴォックスジャパン

 ステラヴォックスジャパンは,スイスのGoldmund(アンプ,CDプレーヤ,スピーカ),イギリスのWilson Benesch(スピーカ),南アフリカのVivid Audio(スピーカ),ドイツのRolf Kelch(ターン・テーブル),米国のAcoustic Zen Technologies(ケーブル)を輸入している。今回のショーの注目はVivid Audioのスピーカである。

 Vivid Audioは,1991年に南アフリカに設立されたGessner Guttentag and Associates(建築・音響コンサルティング会社)がその母体であり,2003年にこの社名変更した新しいスピーカ・メーカーである。

 開発の中心は,90年代半ばにB&W Nautilusを開発し,Laurence Dickieである。このオリジナルNautilusは,非常に革新的なデザインでそれ以降のスピーカの技術開発に多大な影響を与えた。


図5●B&W Nautilus

 2004年7月にEUでK1,B1,C1,C1pが発売され高い評価を獲得した。日本では,2006年3月から発売されている。

 Vivid Audioのスピーカはユニット,エンクロージャなどすべて自社開発,自社製造である。設計思想は,スピーカ・ユニットこそがスピーカ・システムの品質を決定するというもので,Laurence Dickieが低歪,色付けの無さにこだわって設計したものである。同氏が目指したのはユニットの性能を極限にまで高め,それ以外から音を出さないということである。このため,キャビネットはカーボン・ファイバで強化されたFRPを使用し,エッジを全く持たない滑らかな局面で構成されている。キャビネットの肉厚は8mmである。内部は支え材によって補強されている。

 スピーカ・ユニットは以下のコンセプトに基づいて開発されている。
・使用帯域内で完全なピストン・モーションで動作する
・音色を統一するために,すべての振動板に同一のアルミ素材を使用する
・空気抵抗などの余分な負荷をできるだけ無くすことにより,歪の発生を極限にまで抑える
・ユニットはキャビネットに振動を伝えないこと。ユニットはOリングを介して取り付けられている

 口径26mmのトゥイータのD26は,44kHzまでフラットな周波数特性を達成している。このためには,振動板は軽量で,十分な強度を持っている必要がある。このため,アルミ薄膜をドーム部に採用している。シミュレーションにより,断面形状は,カテナリ曲線(懸垂線)が最も強度が高くなることが分かり,この形状を採用している。ドーム部外周をカーボン・ファイバ・リングで補強している。

 ユニット固有の最低共振周波数を,使用する周波数よりもはるかに低いところに下げるため,振動系の背圧をスムーズに逃がす必要がある。このトゥイータの振動板の背後は開口していて,背圧は,ユニットに連結したアブソーバ・チューブにより,共振や反射の影響を受けることなく減衰される。このような構造によって,全帯域にわたって,フラットで低歪率を実現している。

 マグネットは8個に分割されたネオジウムであり,2.4Tという大きなギャップ磁束を得ている。磁気回路のシミュレーションにより最適化を行い,漏れ磁束が極めて少なくなりテレビの傍に置いても磁気の影響が出ない。この強力な磁気回路と軽量振動板により,ユニット単体で100dB/mの能率を達成している。

 2.4Tという強力な磁界でも使用に耐えうる磁性流体を米Ferrotec Corporationと共同開発した。この磁性流体により,ボイス・コイルの冷却効果が飛躍的に高まり,高い入力レベルに耐えられるようになっている。


図6●Vivid Audio D26,D50のボイス・コイル


図7●Vivid Audio D26

 口径50mmの中域ユニットのD50は,D26と同様な設計思想で開発され,20kHzまでフラットな周波数特性を実現している。能率も100dB/m以上を達成している。


図8●Vivid Audio D50。アブソーバ・チューブが装着されている

 中低域ユニットのC125では,分割振動帯域を極限にまで上げ,使用帯域全体でピストン・モーションを確保している。口径は158mmである。シミュレーションにより,振動板形状とセンター・キャップ形状を決定し,35Hzから6kHzまでピストン・モーション動作を可能にしている。

 C125は,最大20mmのストロークを行う。この振幅による空気の動きは非常に大きいため,空気の流れを妨げるものがあると,リニアリティが損なわれ,再生音に不要なものが付加されてしまう。C125では,空気の流通を妨げる要因をことごとく排除している。


図9●従来のスピーカ・ユニットではロング・コイル,ショート・ギャップ構造を持つためリニアリティが十分に確保できなかったが,ここに示すようにVivid Audioの C125では,ショート・コイル,ロンググ・ギャップの構造を採用し,十分なリニアリティを実現している。冷却効果も高い


図10●Vivid Audio C125のボイス・コイル。孔を多数開け,空気のノイズを発生させないようにしている


図11●Vivid Audio C125のCG画像


図12●Vivid Audio C125

 Vivid Audio V1は,2ウェイ,2ユニットのバスレフ型スピーカ。現在のところこのシリーズで最も小型である。D26とC125を搭載。能率は89dB/W/m。公称インピーダンスは8Ω。周波数帯域は,40Hz~42kHz(-6dB),45Hz~39kHz(±2dB)。高調波歪率は0.5%以下(全周波数帯域内,2nd+3rd)。最大入力150W(ミュージック・パワー)。寸法は,幅255mm×高さ635mm×奥行き195mm。重量は17kg。価格は,2台で84万円。2006年5月発売。色は5種類。


図13●Vivid Audio V1

 Vivid Audio V1.5は,V1にスタンドを取り付けたフロア型モデル。寸法は,幅255mmX高さ1130mmX奥行き240mm。重量は23kg。価格は,2台で94万5000円。2006年5月発売。


図14●Vivid Audio V1.5

 Vivid Audio B1は,3.5ウェイ,4ユニットのフロア型スピーカ。背面にC125中低域ユニットを装備し,リアクション・キャンセル方式を装備している。これは,20mmにもなるウーファの大振幅がキャビネットに与える反作用の影響を皆無にする技術である。C125が前と後ろにマウントされ,内部で連結されている。この2つを同相で駆動し,お互いの反作用力を打ち消しあい,キャビネットに及ぼす不要振動を皆無にしている。バスレフ・ポートも同様の配置を行っている。

 D26,D50,C125(2個)を搭載。能率は89dB/W/m。公称インピーダンスは4Ω。周波数帯域は,35Hz~44kHz(-6dB),39Hz~41kHz(±2dB)。高調波歪率は0.5%以下(全周波数帯域内,2nd+3rd)。最大入力300W(ミュージック・パワー)。寸法は,幅265mm×高さ1095mm×奥行き420mm。重量は38kg。価格は2台で149万円。2006年3月発売。色は5種類。


図15●Vivid Audioのリアクション・キャンセル方式


図16●Vivid Audio B1

 Vivid Audio K1は,B1のウーファの数を4台にした3.5ウェイ,6ユニットのフロア型スピーカである。最大入力600W(ミュージック・パワー)。寸法は,幅280mmX高さ1300mmX奥行き488mm。重量は56kg。価格は,2台で262万5000円。2006年8月発売。色は5種類。


図17●Vivid Audio K1