ジャパンシステムが岩手県滝沢村から、財務会計システムの再構築を受注した。事業計画や予算編成の改革に取り組む先進自治体の要求に応え、地元の既存取引先など強敵に競り勝った。

=文中敬称略


 「この案件を取る意味はあるのか。東京にも営業するところはいくらでもあるだろう」。ジャパンシステムの経営陣は当初、自社拠点のない東北地方の案件に営業やSEのリソースを投入することに否定的だった。だが、営業本部自治体営業部主任の竹沢勝は、滝沢村が自社の自治体向け行政マネジメントシステムの格好の先進事例になると確信していた。直属の上司とともに経営陣に商談継続を訴え、ゴーサインを取り付けた。

 岩手県の中部、盛岡市の北西部に位置する滝沢村。日本一の人口を抱える村として有名だが、もう一つの大きな特徴がある。「行政は経営である」という基本認識の下、行政改革に取り組んでいる先進自治体なのだ。改革の大きな目的の一つが、事業計画と予算編成の一体化である。

 多くの自治体では、計画は計画、予算は予算と別立てで仕事が進められる。個々の事業の積み上げ型の予算編成では、それぞれの事業の優先順位が明確でなく、結果として予算を付けられない事業も出てくる。滝沢村経営支援部財務課長の遠藤正紀は「計画と予算を実行する部分のかい離をいかになくすかは、全国の市町村が抱える共通課題」と話す。

 滝沢村は、他の自治体に先駆けてこの課題に取り組んできた。2005年度に第5次総合計画がスタートするのを機に、従来のやり方を見直すことにしたのだ。自治体運営の基本方針である総合計画を個々の政策や事業計画に落とし込む過程で、予算編成も一体管理できるようにする。

 実は、これらの業務を支える財務会計システムが、ちょうどリプレース時期を控えていた。そこで財務会計システムの刷新に合わせ、役場内の業務プロセスの改革を実行することにした。2007年4月の全面稼働に向け、システム再構築を検討し始めたのだ。

通常2時間のデモが5時間に

 滝沢村財務課の熊谷誉也は2004年秋ごろから、滝沢村が目指す仕組みを実現できる財務会計システムの情報収集を開始。既存システムを担当していた地元ソリューションプロバイダなど、4社に情報提供を依頼した。  そのうちの1社が、雑誌広告を見て資料請求したジャパンシステムである。熊谷はそれまでジャパンシステムの名前すら知らなかったが、ホームページを見ると、滝沢村が狙いとする事業計画と予算編成との連携機能を提供しているようだった。熊谷は「まずは資料だけ請求して情報を入手できればいい」と考えたのだ。

 資料請求のメールを受け取った竹沢は、すぐに滝沢村のことをホームページで調べた。滝沢村が掲げる自治体経営の考え方は、まさにジャパンシステムが提供する行政マネジメントシステムのコンセプトと合致する。「こういう自治体に売りたい」と強く感じた竹沢は、すぐに熊谷に電話をかけ、面談とデモの実施を願い出た。



本記事は日経ソリューションビジネス2006年11月15日号に掲載した記事の一部です。図や表も一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。
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