多くのユーザー企業が、サーバー統合に乗り出している。理由はコスト削減だけではない。IT部門が自らの業務を軽減できるからだ。この点をとらえたITベンダーは、商機を広げられそうだ。



 サーバー統合ビジネスが活況だ。日本ヒューレット・パッカード(HP)の久保耕平インフラストラクチャソリューション本部担当部長は、「昨年に比べ、サーバー統合の案件とその売上高は2倍になった」と明かす。

 日本IBMでも、サーバー統合ビジネスが堅調に伸びている。「当社のサーバー統合ビジネスの象徴は、z-Linuxサーバー。金額自体は公表できないが、2005年度におけるz-Linuxサーバーの出荷額は2004年度に比べ、90%アップした。今年度も、昨年度を超える出荷額になることは間違いない」。日本IBMの渡辺朱美システム製品事業担当執行役員はこう語る。

 国産メーカーはどうか。NECは、「ハードだけでなく、ソフトやSIも含めたサーバー統合関連の今期の受注高は、昨年度比190%以上になりそうだ」(広報)とする。富士通と日立製作所は、ブレードサーバー事業を堅調に伸ばしている。ユーザー企業が分散したWindowsサーバー機を統合する場合、ブレードサーバーを導入することが多い。

 富士通の場合、2006年度上期におけるブレードサーバー「TRIOLE BladeServer」シリーズの出荷台数は、前年同期比の50%増となった。日立製作所のブレードサーバー「BladeSymphony」も、具体的な伸び率こそ公表していないものの、「出荷台数は堅調に伸びており、その導入ケースの3割がサーバー統合案件だ」(広報)。

 サーバー統合ビジネスの盛り上がりは、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の調査「企業IT動向調査2006」からもうかがえる。サーバー台数を前年に比べ「増加」させたと回答した割合は、2005年度が50%。2004年度に比べ6ポイントも減っている。JUASは「サーバー増加の動きは一段落し、統合が今後の課題になる」と分析している。

 ブレードサーバーについては、「導入済み」と回答した割合は2005年度が13%。2004年度の9%に比べ、着実にブレードサーバーの導入気運が高まってきた。

統合に熱心な大手ユーザー

 実際に、ローソンやJTB、カシオ計算機、日産自動車など大手ユーザー企業は、サーバー統合作業に着手している。ローソンは今年6月、IBMのメインフレーム「zSeries990(z990)」2台を導入し、サーバーを統合した。サン・マイクロシステムズやHP、NECなどのUNIX/Windowsサーバー約200台をz990に集約し、システム運用・保守費を10%削減する。新たなシステムインフラを整備したことで、アプリケーション開発期間も、従来に比べて1カ月以上の短縮を見込む。

 JTBは来年4月をめどに、国内400支店で動かしている「支店管理システム」向けのサーバーを統合する。支店ごとに分散していたデータベース(DB)サーバー400台を撤廃。10台のDBサーバー(HP Integrity RX4640/2620)と60台のアプリケーションサーバー(HP ProLiant BL20p)に集約し、同社の東京・多摩地区にあるセンターで集中管理する。

 「物理的に分散しているサーバーの維持は負担が大きい。集中管理できれば、運用・保守コストを削減できるだけでなく、我々の業務の手間も省くことができる」。JTBグループの情報化を担うJTB情報システム(JSS)の野々垣典男執行役員はこう語る。今回のサーバー統合によりJTBは、支店管理システムの運用・保守費を年間30億円削減できると見る。



本記事は日経ソリューションビジネス2006年11月15日号に掲載した記事の一部です。図や表も一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。
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