NTTが2007年3月期の中間決算を発表した(関連記事1)。相変わらずの音声収入の縮小により減益ではあるが,Bフレッツがついに500万契約を越え好調なことなどが寄与して増収となった。フレッツADSLと契約者数が逆転するのは間もなくだ。

 そんな中,業績とは別に注目を集めたのが,NTTが12月にスタートを予定しているNGN(次世代ネットワーク)実証実験(フィールド・トライアル)の参加企業である。中間決算の説明と一緒に明かされた。具体的には,NEC,NECビッグローブ,シスコシステムズ,ソニー,日立製作所,松下電器産業,そしてNTTコミュニケーションズの7社。このほか,プロバイダが参加するという。

 ただ,これらの企業が参加するという以上のことがほとんどわからない。アプリケーションに関しては,「ひかり電話よりも高音質な電話」,「高品質なテレビ電話」,「IMS(ip multimedia subsystem)準拠のマルチメディア・サービス」,「ハイビジョン映像の配信」,「地上デジタル放送の再送信」などを挙げてはいる。メンバーの顔ぶれを見ると,ソニーや松下が情報家電のような機器を提供しそうだなどの想像も働く。だがどこをとってみても,「NGNらしさ」が感じられない。ここで筆者が言っている「NGNらしさ」というのは,「ユーザーの視点から従来のサービスよりも進化し,便利になると感じられる部分」である。

 IP電話やテレビ電話なら,今のインターネットを含めた既存の通信サービスで実現できる。ハイビジョン放送だって不可能ではない。しかも,ひかり電話よりも“高音質”な電話,高品質なテレビ電話は,いったいどれだけのユーザーが必要としているのだろうか。不要だなどと言う気は毛頭ない。しかしマジョリティのためのサービスだとはどう考えても思えない。もちろんトライアルだから,今あるインターネットやブロードバンド・サービスより高品質,低価格になるかどうかはわからない。ユーザーにとっては,どんな夢を見られるのかさえ分からないままだ。

 これらのデモは,東西NTTが12月20日にオープンするショールームで一般公開される(関連記事2)。だが,この調子ではデモを体験してみてもNGNが今までのネットワーク/サービスとどう違うのかは見えてこないだろう。ユーザーの視点に立てば,NGNのデモよりも,最近話題のWeb2.0に分類されるアプリケーションやサービスの方がよほど「新しい」,「次世代の」ものに見えるのではなかろうか。具体的には,マイスペース のようなSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)がその一つだ(関連記事3)。最近ではSNSは,企業内で活用しようという動きが広がっている(関連記事4関連記事5)。

 NGNには,こうした具体的な「らしさ」がほとんど見当たらない。今に始まったことではないが,トライアル開始を1カ月後に控えた状況で,あまりにも変わり映えしない。早く,もっと具体的な「NGNらしさ」示してほしい。