連日,ソフトバンクモバイルに関するニュースがお茶の間をにぎわせています。ソフトバンク得意の「0円」を全面に出した新料金プランに始まり,開始直後の週末にあったシステム・トラブル,「0円」広告の見直しと次々に話題が飛び出し,消費者の携帯電話の番号ポータビリティ(MNP)への関心を一気に高めました。この点では,ソフトバンクが通信業界にもたらした話題性の効果は大きかったと感じています。

 肝心の新料金プランに関して言えば拍子抜けでした。ギリギリのタイミングで料金プランを発表すること自体はサプライズでしたが,料金の内容をよくよく見ると大して安いわけでもありません。ソフトバンクが「Yahoo! BB」や「BBフォン」を始めたときのような「新規性」や「市場破壊力」は,今回の料金プランには見られませんでした。UBS証券株式調査部の乾牧夫シニアアナリストは,「ソフトバンクの新料金プランは値下げでも何でもない。今回のプランをきっかけに,料金競争が起こることはない」と分析しています。

 MNP前夜の記者会見というシチュエーションや,孫正義社長の弁舌のうまさをマスコミは一斉に報道しました。ですが翌日には,「安いどころか数カ月経てば高くなる」,「ボーダフォン時代からの割引プランと大差ない」,「2年以上も機種変更できないのは問題」といった冷静な記事が相次ぎました。一瞬は高揚した消費者も,ごく短期間のうちに冷静な対応に変わった印象です。孫社長のサプライズ戦略に,マスコミも消費者も慣れてきたのではないでしょうか。

 MNP開始直後のお祭り騒ぎは収束しつつあります。ソフトバンクモバイルがユーザー数を増やすのか,減らすのか。今後は料金プランだけでなく,ネットワークのつながりやすさや端末の魅力など,携帯電話事業者としての実力を消費者に判断されることになります。ソフトバンクだけでなく,王者NTTドコモのシェアは切り崩されるのか,前評判通りにKDDIはユーザーを増やすのかも大きな関心事です。巨大な携帯電話市場がMNPを期に,どう変わるのか。要注目です。