■商談や会議・ミーティングにおける上手な会話の仕切り方について解説する「会話を仕切る編」の第6回。会話というキャッチボールが成立するためには、適切な「間」が必要です。この「間」というものをよく考えてみましょう。

(吉岡 英幸=ナレッジサイン代表取締役)


 会話が滑らかになり、弾むようになるには適切な「間」が必要だ。

 キャッチボールでも、こちらがボールを投げた後には、相手が受けて投げ返す動作をするまでじっと待つ。それを待たずにこちらがまたボールを投げても、相手は受け止められない。

 しかし、この「間」ががまんできず、ボールが返ってくる前に思わず次のボールを投げてしまう人がいる。これでは、結局会話がかみ合わない。

 ひと口に「間」と言っても、それは決して沈黙とイコールではない。

 よく「私はなんだか沈黙が怖いんですよね。ちょっと沈黙があると何かしゃべらずにいられないんですよね」という人がいるが、そりゃそうだ。沈黙は誰だって怖い。しかも長い沈黙をただじっとやり過ごしていても、それは適切な「間」とは言えない。ただ会話が停滞しているだけだ。

 「間合いをはかる」という言葉があるが、この場合まさにピッタリな言葉だ。要は相手が話しやすいタイミングをはかってやることが大切なのだ。

「間合いをはかる」は時間稼ぎに付き合うこと

 会話のキャッチボールを考えた場合、いずれか一方が話をするタイミングは次の3通りのパターンに分かれる。

 (1)相手が何を話そうが、次に自分が何をしゃべるかほぼ決まっている
 (2)相手が話しているうちに、「次はこれをしゃべろう」と思いつく
 (3)相手が話し終わってから、次に何をしゃべるかを考える

 「間合いをはかる」ことが重要になってくるのは3のパターンで、相手が話し終わった瞬間にはまだ自分の話すことを思いついていないケースだ。そういう場合、人は「そうですよね」とか「なるほどねえ・・・」などと言った接続詞で時間稼ぎをして、その間に次にしゃべることを考える。

 以前に述べた「承認」の合図などではなく、単なる時間稼ぎの相槌だ。通常の会話の中でこのパターンは実に多い。

 そういう場合は、相手も「いやいや、ほんとですよね」などと同じような相槌で時間稼ぎに付き合ってあげて、話したいことがまとまるのを待つのがベスト。だが、これが待てない人が結構多いのだ。

 自分が一通り語ったあとに「そうなんですよ」などという相槌で相手が終わってしまうと、「あ、それだけですか。じゃまた私の番ですね」という感じで再び語りモードになってしまう。そうなるといつまでたっても、相手はまとまった話をできないし、結局相手から聞きたいことも聞き出せない。

 「あの人なかなかしゃべってくれないんだよね」なんて言いながら、実は自分がしゃべらせていないだけになっていたりするのだ。

2対1での間合いのはかり方

 一方、1対1なら間合いをちゃんとはかれている人でも、2対1の場合そうでもないことが多い。

 例えば商談の席でこちらは営業とSE、あるいは上司や部下などという二人組で、お客様が一人の場合がある。こちら側A1、A2とお客様Bの発言の順序が以下のようになってしまっているのをよく見かける。

 A1⇒A2⇒B⇒A1⇒A2⇒B⇒A2⇒A1⇒B・・・

 こっちが二人ともしゃべってからお客様、また二人ともしゃべってからお客様というふうに、常に二人組の両方がしゃべらないとお客様にマイクを渡さないというパターンだ。これでは、お客様が話すタイミングを奪ってしまって、会話量に大きな隔たりができてしまう。結果的に、お客様から重要な情報を得られない。

 私は営業現場で部下と同行して2対1で相手と会話するときは、必ずA1⇒B⇒A2⇒B⇒A2⇒B⇒A1⇒B・・・というふうに、こっちが一人しゃべったら相手が1回しゃべるまで、もう一人はしゃべらない、というルールを課している。そうすることで、お客様との1対1の会話量を確保することができるのだ。

 間合いを詰めすぎず少しのガマンができるか。これが会話を弾ませるポイントなのである。


著者プロフィール
1986年、神戸大学経営学部卒業。株式会社リクルートを経て2003年ナレッジサイン設立。プロの仕切り屋(ファシリテーター)として、議論をしながらナレッジを共有する独自の手法、ナレッジワークショップを開発。IT業界を中心に、この手法を活用した販促セミナーの企画・運営やコミュニケーションスキルの研修などを提供している。著書に「会議でヒーローになれる人、バカに見られる人」(技術評論社刊)、「人見知りは案外うまくいく」(技術評論社刊)。ITコーディネータ。