現在多くの読者が,Windows Vista RC1をテストすべきかどうか迷っているだろう。筆者はいつものように,テスト専用のパソコンを用意することを推奨している(常用するパソコンにデュアル・ブート状態でインストールすることは勧めていない)。また,自分が持っているパソコンでWindows Vistaが実行できるか,悩んでいる読者も多いだろう。

 ほとんどの読者が,マイクロソフトが公表する「最低システム要件」がアテにならないことを知っているだろう。これは,コンピュータを快適に使うのに必要な条件ではない。とはいえ残念ながら筆者も,どういうハードウエアであればWindows Vistaを快適に利用できるのかよく理解していない。マイクロソフトはそういったユーザーのために,「Windows Vista Upgrade Advisor RC Release」というツールを提供している。

 Upgrade Advisorは単純なツールだ。コンピュータをスキャンして互換性の問題がないかチェックし,互換性問題を修正する方法を提案する。筆者は何人かの読者の方にこのツールを勧めたのだが,彼らの感想は賛否両論であった。そこで筆者も,事務所に置いてある数台のパソコンで,Upgrade Advisorを実際に自分で使ってみた。

 最初にスキャン対象としたのは,筆者が常用しているデスクトップ・パソコンだ。18カ月前に組み立てたとき,このマシンは最新鋭のシステムだった。予想通り,Upgrade AdvisorはこのパソコンでWindows Vistaが実行できると告げてくれた。ただし,このツールのレポートによると,筆者のオーディオ・デバイスは,Windows Vista対応のドライバを入手しないと機能しないそうだ。他に気になったのは,Windows Vistaで動作させるためにはアップグレードさせなくてはならないソフトウエアが何点もあったことだ。だが,マイクロソフト純正の「Microsoft Wireless Optical Mouse」用の「Intellipoint Software」が,Windows Vistaに対応しないことを除けば(これには驚かされた),他の問題は想定の範囲内だった。

 次にスキャンしたのは,先ほどのマシンよりも古い,デュアル・プロセッサを搭載するサーバー・マシンだった。サーバー・マシンにWindows XPをインストールして,直後にUpgrade Advisorを試してみた。今回は,問題が全く報告されなかった。サーバー・マシンだけあって,非常にシンプルなハードウエア構成になっていたためだ。また,「Windows Vista Premium Ready PC(Windows Vista Ultimate Editionへのアップグレードが可能なパソコン)」のシステム要件を凌駕するハードウエアを搭載していたこともある。

 最後に調べたパソコンは,約4年前には最先端だったものだ。筆者は今でもこのマシンを毎日使っており,マシンには多くのアプリケーションや周辺機器がインストールされている。2.8GHz動作のPentium 4と2Gバイトのメモリー,1Tバイトのハードディスクを搭載するこのマシンが「使い物にならない骨董品」であるわけはない。

 しかし,Upgrade Advisorはこのスペックに満足できなかったようだ。このマシンに搭載されているビデオ・カードでは十分ではないという判定が出た。またUpgrade Advisorは,自身が精通していない製品に関係する,多数のドライバやアプリケーションの問題を見つけ出した。しかしこれらのハードウエアやアプリケーションに本当に問題があるのかまで判断することは,ユーザーにとっては不可能である。

 結局のところ,非常に心許ない答えにしかならないが,既存のパソコンでWindows Vistaが動くかどうかは,評価版を実際にインストールして試すしかないようだ。