企業のWebサイトは、サービス・製品の紹介、IR、採用、ECほか多くの目的に活用されている。最近はマーケティングやブランディングへの活用も盛んになってきた。Webサイトをより高いレベルで活用するために、
1)Webのブランディング活用への適合性
2)サーチエンジン対応への適合性
3)使い勝手のよさ
という観点から特定企業のWebサイトを独自に分析し、報告をお届けする。

 初回は「Webブランド調査2006-4」で、ポータル系サイトを除くトップ(総合7位)となったキリンビールを取り上げ、Webサイトにおけるブランディングの展開手法についてまとめる。

 Webサイトにおけるブランディングとは、ターゲットとなるビジターへ、ブランドメッセージを届けるサポートを行うことにある。Webサイトの要素としては、
(1)企業と事業を理解させるコンテンツがあり、リンクがあること
(2)Web以外のメディアの広報・広告と連動していること
(3)Webの利用を通じてブランドを体験してもらえること
をチェックする。

サイト全体で「うれしいを、つぎつぎと。」を体現

 キリンビールのグループスローガンは「うれしいを、つぎつぎと。」。トップページを開くと、ヘッダ近くの画像で、まさに「つぎつぎと」キャンペーンや製品の情報が花開く。メッセージを届けるべきターゲットは、キリン製品のファンまたはファン候補である。主力商品に関連したキャンペーンや限定製品情報などは、顧客にとって「うれしい」情報だ。「うれしい」情報がトップページのヘッダで展開される設計は、スローガンのイメージとぴたりと合致している。

図1
図1[画像のクリックで拡大表示]

 コンテンツページでも「うれしい」は「つぎつぎと」体現される。例えば「知る・楽しむ」のカテゴリートップへ行くと、酒についてのうんちく、酒席でのたのしみネタ、後援するスポーツや文化事業などの紹介が並んでいる。これもスローガンに合致する。

 ただし「うれしいを、つぎつぎと。」というスローガンが提示されているのは、つぎつぎと展開される画像のはじに位置するサイトの右上。一般にWebサイト利用者の視線は左上から始まり、画面を「Z」字または「F」字を描くように動くとされている。メッセージは、サイトロゴの下に提示した方が、視線に止まる可能性を高めることができる。

やや探しにくかったCSRなどへのリンク

 キリンビールでは、「うれしいを、つぎつぎと。」のグループスローガン以外に、『世界の人々の「健康」・「楽しさ」・「快適さ」に貢献』することを経営理念とし、「お客様本位・品質本位」「オープンでフェアな行動」「人間性尊重」「人間性尊重」「社会貢献」を経営指針に掲げている。これらのメッセージはWebサイトを通して届いているだろうか。

 「楽しさ」に結びつくコンテンツへのリンクは豊富に見つかる。しかし例えば「健康」「快適さ」に結びつくメッセージは、トップページ上に見つけられなかった。トップページの「お酒以外のキリン」から、グループ会社のサイトに入り、そこでもう一度情報を探しなおす必要があった。いつも一般消費者の近くに製品があり、信頼される企業グループとして「食と健康」のよろこびを提供することをスローガンとするならば、関連コンテンツは探しやすくする必要がある。また文章や色使い、装飾的な要素などもそのスローガンを感じ取れるような構成にすることが望ましい。

 また「社会貢献」のアピールは企業のブランディングに欠かせないが、社会貢献活動のコアとなるCSRや環境保護活動についても、「キリンについて」をクリックした後でなければ見つからない。企業活動を理解してもらい、より円滑に事業を進めるためにブランディングを展開する場合は、トップページにCSRや環境保護活動などに関するコンテンツへのリンクを設けた方がよい。

図2
図2[画像のクリックで拡大表示]