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北岡弘章の「知っておきたいIT法律入門」

画面デザインの保護(1)
著作権だけで保護できる範囲は広くない

ITpro 2006/11/10 ITpro

 コンピュータ・ソフトウエアの画面デザイン,ユーザーインターフェースの出来不出来といったものは,ソフトウエアの使いやすさに直結します。操作性のみならず画面デザインの美しさについても,さまざまな工夫がされるようになっています。画面デザインやユーザー・インターフェースの良さは,情報機器を選択する際の重要な要素になっています。

 このような画面デザインは,知的財産権で保護されるのでしょうか?

 結論から言うと,画面デザインは知的財産権のうち,著作権,特許権,意匠権といったものによって保護されることがあります(注1)。特に意匠権については,「意匠法等の一部を改正する法律」が平成18年6月1日に成立し,画面デザインの保護の拡充が図られることになっています(注2)。法的な側面でも,画面デザインの保護というのは注目されているといえるでしょう。

 ただし「保護されることがあります」というだけであって,画面デザインが当然のように知的財産権で保護されるわけではありません。画面デザインが著作権法上どの範囲で保護され,著作権,特許権,意匠権による保護では,それぞれ何が違うのかを比較してみたいと思います。

「似ている」だけでは著作権侵害とは言えない

 ソフトウエアの画面デザインは,プログラムによって決まります。歴史的に見ても,プログラムについては特許権,著作権あるいは第三の法律のいずれかで保護するのかについて議論がありました(注3)。著作権で保護することでいったんは決着していましたから,今回は著作権による保護とその限界をまず検討します。

 ユーザー・インターフェースに関する著作権侵害については,いくつか判例があります。ここでは有名な「サイボウズ対ネオジャパン事件」を取り上げます(注4)

 一般のソフトウエアに関する著作権侵害訴訟は,ソースコードあるいはオブジェクトコードが似ているか(複製・翻案にあたるか)が問題となります。しかしソフトウエアの場合,ソースコードを完全に書き換えながら,全く同じ機能やユーザー・インターフェースを持つソフトウエアを作ることはそれほど難しいことではありません。結果として,ソースコード等が類似であることを理由に損害賠償や差し止めを求めることは,難しいということになります。

 このような背景もあって,ソフトウエアを巡る紛争ではユーザー・インターフェースが似ていると言うことで訴訟になることがあります。サイボウズがネオジャパンを訴えた「サイボウズ対ネオジャパン事件」もその1つといえるでしょう。

 同事件の判決は,結論としてネオジャパンによる複製・翻案権侵害を否定しました。両社のソフトともWebベースのグループウエアであり,両ソフトの操作画面を見れば似ていなくもありません(判決の添付資料参照)。Webベースということもあり,操作方法(画面の遷移)もそれほど大きく違うものではなかったのではないか,と思います。しかし「似ている」だけでは,著作権侵害とは言えないのです。

 同判決はネオジャパン製グループウエアの表示画面が著作権を侵害しているかについて,「仮に原告ソフトの表示画面を著作物と解することができるとしても,その複製ないし翻案として著作権侵害を認め得る他者の表示画面は,いわゆるデッドコピーないしそれに準ずるようなものに限られるというべきである」と判断しています。

 まず,「仮に原告ソフトの表示画面を著作物と解することができるとしても」としていますので,ソフトの表示画面が「著作物」に該当するかどうかは判断していません(著作物でないという判断もしていません)。このことは,ソフトの表示画面が当然のように著作物となるものではない,ということを意味しています。

 次に,ソフトの表示画面がデッドコピーかそれに準じるものしか,著作権では保護されないと判断しています。デッドコピーというのは,改変なしでそのまま全く同じように複製を行った場合のことを言います。「それに準じる」というのは,改変はしているけれど細部を修正しているだけで実質的にはデットコピーと同視できるような場合が考えられます。

 著作権は創作的に表現されたもの(著作物)を保護する権利で,グループウエアのようないわゆるビジネスソフトの場合,機能や利便性の観点からおのずと自由に創作できる範囲は限定されます。また,グループウエアの場合,「スケジュール」「行き先案内板」「施設予約」「掲示板」「共有アドレス帳」等の機能は,紙ベースで行われていたものをコンピュータに持ち込んだ部分もあるため,おのずと書式等は似通ったものにならざるを得ません。この意味でも創作性が発揮される余地は狭いということなのです。

 創作の幅がせまいにも関わらず著作権で必ず保護されるということになると,極端に言えば,カレンダー形式をもったスケジュール画面を持ったグループウエアを第三者が作れなくなりかねません。

 このような配慮もあって,上記判決は著作権侵害となる範囲を限定しているのです。結論を言えば,画面デザインは,著作権では必ずしも保護されるわけではないということです。もちろん,上記の判決は,業務上使用されるソフトについての判断であり,例えば,ゲームソフトなどにそのまま妥当するわけではありません。機能性,利便性が優先されるようなソフトウエアでは,著作権で保護される範囲はそれほど広くないと言えるでしょう。

 画面デザインだけでなく,プログラムを著作権だけで保護することの限界は徐々に認識されています。このため,現在ではソフトウエアを特許で保護するという方向性が強くなっています。

 次回は,特許権による画面デザイン保護の問題を取り上げます

(注1)場合によっては,不正競争防止法により保護されることも考えられますが,今回は検討の対象外とします
(注2)意匠法の画面デザインに関する改正法の施行日は,平成19年4月1日です
(注3)1985年の著作権法改正時に,プログラムは著作物として保護の対象になることが明記されました
(注4)東京地裁平成14年9月5日判決


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■北岡 弘章 (きたおか ひろあき)

【略歴】
 弁護士・弁理士。同志社大学法学部卒業,1997年弁護士登録,2004年弁理士登録。大阪弁護士会所属。企業法務,特にIT・知的財産権といった情報法に関連する業務を行う。最近では個人情報保護,プライバシーマーク取得のためのコンサルティング,営業秘密管理に関連する相談業務や,産学連携,技術系ベンチャーの支援も行っている。
 2001~2002年,堺市情報システムセキュリティ懇話会委員,2006年より大阪デジタルコンテンツビジネス創出協議会アドバイザー,情報ネットワーク法学会情報法研究部会「個人情報保護法研究会」所属。

【著書】
 「漏洩事件Q&Aに学ぶ 個人情報保護と対策 改訂版」(日経BP社),「人事部のための個人情報保護法」共著(労務行政研究所),「SEのための法律入門」(日経BP社)など。

【ホームページ】
 事務所のホームページ(http://www.i-law.jp/)の他に,ブログの「情報法考現学」(http://blog.i-law.jp/)も執筆中。

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