ドイツの高級子供服メーカーであるレミー・ファッションは先ごろ、無線ICタグを利用した商品管理システムを本格稼働させた。約100万着の子供服にICタグを取り付けて単品ベースの商品管理を行い、サプライチェーン全体における入出荷作業の効率化や在庫の適正化などを目指している。商品に取り付けるICタグは米チェックポイント・システムズが供給したもので、大量に一括して購入することなどで、単価を日本の標準価格の3分の1程度に抑えた。

 レミー・ファッションの縫製工場は中国にある。工場から出荷された商品は、船便でドイツに送られる。ドイツに入港した商品は同社のドイツ国内の配送センターを経由して、欧州とアジア各国の小売店(レミーの直営店や百貨店など)に届く。1年間にこれらの小売店に供給される商品数は約100万着(250~280種類)であり、代表的な多品種少量生産品といえる。

 レミーはこれらの子供服すべてに、13.56MHz帯の周波数に対応したチェックポイントのICタグ「Performa」を取り付けている。ICタグはつり下げ型の紙製の商品札に挟み込んであり(写真1)、中国の工場において子供服に取り付ける。通常の商品札と一体化されているため、ICタグを採用したことによる余分な作業は発生していないという(写真2)。

写真1 紙の商品札に挟み込んだICタグ


写真2 中国の工場でICタグが付いた商品札を取り付けているところ

 ICタグにはID番号だけが書き込んであり、商品管理システムのサーバーに蓄積した商品のデータと、その商品に取り付けたICタグのID番号をひも付けておく。ICタグのデータは、中国の工場から配送センターへの出荷時と配送センターにおける入出荷時、各店舗における入荷時に読み取る。これらの入出荷に関するデータは、サーバーに蓄積してリアルタイムで管理する。ただしICタグシステムが故障したときのバックアップとして、商品札にはバーコードが印刷してある。このバーコードを読むことで品番やサイズ、色などの最低限のデータは確認できるようになっている。

 レミーがこのようなICタグシステムを導入した最大の狙いは、サプライチェーン全体にわたって単品ベースの商品管理を行うことだった。サプライチェーンの各工程においてICタグを使って収集したデータを活用することで、売れ筋商品の品切れを極力なくしたり、売れ行きが良くない商品の出荷を減らしたりといった計画的な商品の供給体制と、適正在庫の実現を目指している。また、工場や配送センターなどにおける入出荷検品作業を効率化することで、コストの削減にも取り組んでいる。さらに、工場から出荷されて小売店に届くまでの間に、盗難などによって商品が行方不明になる問題も解決したい考えだ。

 レミーは今回チェックポイントから、約200万枚のICタグ付き商品札を購入した。大量にまとめて発注したことなどで、「日本の標準価格の3分の1程度の単価で供給した」(チェックポイントシステムジャパンRFID事業部長の橋爪秀知氏)という。このICタグ付き商品札をレミーは、リサイクルしないで使い捨てにしている。ICタグ付き商品札は単価が50円以下とはいえ、通常の商品札に比べると高い。こうした商品札を使い捨てにできるのは、「レミーが扱っているのが高級ブランド子供服という高価格商品だから」という見方もできそうだ。




本記事は日経RFIDテクノロジ2006年7月号の記事を基に再編集したものです。コメントを掲載している方の所属や肩書きは掲載当時のものです。